ーー真実は思っていた通りでもあり、残酷でもあった。
ジョーカーと、後に名乗るヴィクトル・リヒトが教えてくれたのは、まず父が発火した原因。父はやはり、人工的に作られた焔人だったらしい。
そこまではビルの屋上でジョーカーから聞いていたし、自分で調べていた時に疑ってもいたことだったから納得はできた。
驚いたのはそこから先。
人工的に焔人を作っている人間は組織で動いているらしい。二人はその組織を伝導者一味と呼び、その組織が焔人化させた事件やそれによって起きた火災を記録した資料を見せてくれた。
そこには、資料で見たことのある大きな火事や強力な焔人の出現から、私が第一に配属されてから今日までの間に実際に居合わせた事件も記されていた。
それだけじゃない。ジョーカーが言うには第一に伝導者一味の人間がいて、その人間は間違いなく人工的に焔人を作っているらしい。
ーー私は背筋が凍った。
真実を知ったと思ったら、それはただの始まりにしかすぎなかった。伝導者って何?目的は?
第一に伝導者一味の人間がいる…?誰?
「…オイ、大丈夫か」
ーー靴を脱いでいたナナは座っている椅子に足をのせると、そのまま脚を抱きしめ、そこに顔を押し付けた。ーー気分が悪かった。
手紙を頼りに真実を求め、恐怖を押し殺し、先輩をある意味欺きながらここまで一人でやってきた精神力をもつナナも流石にキャパオーバー。
ジョーカーは座っていた椅子からのそりと立ち上がると、ナナの背中を摩りにいった。
「……誰なの、それ」
「………」
ジョーカーはナナをここへ導いた。リヒトもそうだ。嘘偽りのない真実を求める自分達側にナナを引き込もうとしていた。それは事実だ。
だが、一人で真実を追い求めてきたナナにできた信頼できる仲間に裏切り者がいることを告げるのは正直迷っていた。ナナにとって、自分に表情や感情を与えた信頼できる仲間だからだ。
「知ったらお前はどうすんだ」
「………わからない。…私は屋上であなたのことを殺すと言ったけど、本当はできない。覚悟が足りないのかな。焔人を鎮魂するのでさえ怖くてたまらない私が、そうじゃない人間を殺せるわけがないよね」
「覚悟云々じゃねェ、それが普通だ。お前はそれでいんだ」
「……でも、いるんでしょ?焔人を作ってる人が第一に。あなたは良い人だから、それが誰かを言わないってことは、私の先輩なんだよね」
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