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「着いたぜ」

ジョーカーの後を付いてきてみれば、それはもういかにもな基地があった。

「これはこれは、第一の優秀な有名人が"こんなところ"になんの用ですか?」

それだけじゃない。中では待っていたのは、"表の人間"だった。

「…」

このモシャモシャ頭の男、知ってる。名前は忘れたけど、確か灰島の天才だ。それがなんでこんなところに…。

「あんまからかうんじゃねェよ、意外と子供なんだ」

私はジョーカーを睨む。彼は笑って隣の部屋へ行った。…わざとだ。

「君の話はジョーカーから聞いてたよ。…というか、あの手紙を出したのは僕なんだ。ああ、その辺に適当に座っていいよ」

「え…じゃああなたが書いたの?」

「いや、書いたのはジョーカーで出したのは僕だよ。気付いてるだろうけど僕は灰島の人間だから、君の引き取られた家を調べて送ったんだ」

彼は同じ表の人間である私が来ても焦る様子がない。とりあえず私は近くの椅子に腰掛け、彼とジョーカーの話を聞くことにした。そのために付いてきたんだし。

「それにしても妙に落ち着いてるね?一応、薄暗い地下の怪しい基地で、怪しい男二人と特殊消防隊の女の子…って状況なんだけど」

「確かに灰島の人がなんでジョーカーと繋がってるのかは気になるけど、私にとってあなた達は現状あの日の真実を知る人で、それ以上でもそれ以下でもない。ジョーカーについてきたのも、彼があの手紙のことを知ってたから。私はあの日の真実を知るために今日まで生きてきた。その為なら、今の立場を捨てることも厭わない」

「…(あの手紙の内容は全て真実だ。嘘偽りはない。…だとしてもたった一通の、しかも差出人不明の手紙を信じて普通こうなるのか?
この子のデータとジョーカーから聞いた近況を合わせて僕が精神鑑定をした時、この子の炎に対する恐怖が浮き上がった。あの日の火災がトラウマでだ。そしてそれを隠す為に無口無表情を貫いていた。第一に配属後、休日を利用して闇や裏の世界での情報収集をはじめた。それも未成年でだ。その後例の三人の先輩の影響で口数が増え、表情も豊かになったと聞いてはいたが……それでも今日まで周りにその恐怖と、真実を知るという目的、その為の手段諸々を全て隠し倒してきた…。
ーーー全ては真実を知る為に、か。)」

「な?オレらにも非があるだろ?」

マグカップを二つ持ったジョーカーが戻ってくる。カップの中からは湯気が立っていた。

「非って、なんのこと?」

ジョーカーは私の質問に答える代わりに、私の前にマグカップを置いた。紅茶の香りがする。

「なんでもねェよ。…さァて、楽しい昔話でも始めるか」




灰島の人間
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