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- ナノ -

ーーこの子は勘が鋭すぎる。
さすが今まで恐怖を押し殺し、普段行動を共にする同僚に一切目的と暗躍を悟らせなかっただけはある。

あの青ざめた顔。動揺し傷ついてもいるだろうに、その中でも冷静な判断ができるんだから大したものーーいやそれ以上だ。ジョーカーがどういう人間かも理解し始めているしね。




「勘違いすんな、俺は良い人なんかじゃねェよ」

コイツにその人間を教えたら、今日迷わず捕らえに行くだろうな。それも一人で。この真実を知るのが表ではコイツ一人だからだ。

だがそいつは強い。性格も性格だ、捕らえようとすれば絶対に強く抵抗するし、その気になればコイツを殺っちまうこともできるだろう。

コイツも強いが人を殺せない。身内となれば尚更だ。お互いに本気で殺り合うことになっちまったらコイツは圧倒的に不利になる。

ーーなら、今教えても意味はねェ。

「お前は真実を強く求め、ようやく今日答えに辿り着いたわけだが……それがほんの始まりに過ぎなかったのはもう理解してるよな?」

「…(なるほど、教えないつもりか。まぁ僕も賛成かな)」

「お前は俺たち側の人間だ。コッチにくればお前の知りたい真実により正確に近づくことができる」

「じゃあ私は消防隊を辞める…!ここにいる!だからはやく教えてよ!誰なのそれは!!」

話を逸らそうとしたら、
あのナナが珍しく取り乱した。
ビー玉みてぇな綺麗な銀色の目を薄ら光らせて。

それを見たリヒトがこの場を去った。

これは俺の経験だが、恐怖にしろなんにしろ、なんらかの感情を押し殺して生きてきた人間ってのはいつか必ずどっかでそれを爆発させる。コイツにとってら今がソレだ。つまりそれほど第一の先輩連中を信頼してたってわけだ。

「まぁまぁ、気持ちはわかるけど少し落ち着きなよ。ほらお茶飲んで」

戻ってきたリヒトは俺がナナに淹れてやった紅茶を下げて、代わりに若干湯気が立つコップをナナの前に置いた。その後、自分と俺の分もテーブルに置いたが、ナナのカップに入ってるモンと俺らのカップに入ってるモンは明らかに臭いが違う。分かるのはコイツと付き合いの長い俺と、これをやってる張本人だけだ。

「…何か入ってるでしょコレ。紅茶飲んでないのに下げるなんておかしいし、三人分持ってきたのはカモフラージュなんじゃないの」

ったく、どこまでも鋭いやつだ。可愛げがねえ。

ーーそういやなんかさみぃな。

「ああ、入ってるよ、生姜と蜂蜜。空調の調子が悪くて寒いからいつもジョーカーと飲んでるんだ。地下暮らしも楽じゃないよ。…それにしても無駄に鋭いな。その感じ、裏世界の経験から来てるの?」

「…あなた達が裏の人間じゃなかったら疑ってない」

「ふうん。だからジョーカーが淹れた紅茶は飲まなかったんだ。…まぁ、見ず知らずの場所で出されたものを飲まないってのは賢明な判断だね」

ーーああ、そうか。なんかさみぃしコイツもおかしいなと思ったら………そうか。

ナナをみれば分かる。この様子じゃ本人は自覚してないみてェだが、さっきからコイツの銀色の目が光ったままだ。なんか見覚えがあるなと思ったら、例の第一の氷使いと同じじゃねぇのかこれ。

だとするなら、まさか今第二世代の能力にも目覚めたっていうのか?いやどんなタイミングだよ。

怒りと目覚め
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