ーー ナナ・沚水。
20だったか21だったか……忘れたが、よくもまぁ差出人不明の手紙を信じてここまで来たもんだ。あの手紙の内容に嘘偽りは無かったが、まさかここまで求めてくるとは思わなかった。
"アイツ"に軽く精神鑑定や分析を頼んだら、「炎に対する恐怖と、なんらかの思考や目的を隠す為に無口と無表情でいる」とか言ってたが、俺が見てる中では最近のコイツは前より表情が豊かになって、口数もかなり増えてる。
それでも恐怖と目的…つまり、真実を追い求めていることをあの第一の連中に一切知られず、隠し通している。
タダモンじゃねェのは間違いねぇ。実力も頭も確かだ。
ーー だが、今のコイツの目には僅かに恐怖の色がある。
炎を見るたび、そしてその中で焔人を鎮魂するたびに無口と無表情の仮面で恐怖を隠し、無意識的にコイツは自分を守ってきた。そうすることで自分を保っていた。
それはコイツの真実を知るための覚悟でもあり、同時に"優しさ"でもある。恐らくそうしなければコイツは恐怖に呑まれて焔人を鎮魂できない。
真実を今ここで全て話さなければ俺を殺すと言っていたが、となれば俺が抵抗するのは当然として、そこで炎でドンパチやり合うことはできても絶対にコイツは俺を殺せない。
俺を殺せば真実を失うというのもあるが、それ以前に焔人ではない人間を殺したことのないコイツに俺を殺すのはまず不可能だろう。
「ハァ……話してやるからついてきな」
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