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オリエンテーション合宿8


「お前なんでそんな濡れとん?」

タオルで髪を拭くはなこに侑が訊いた。同じ顔がはなこを見下ろしている。

『なんか女子軍団に引き止められて、入るん遅なったから』

治は首からかけていたフェイスタオルをとり、「入学早々、またなんかやられたん?」と言いながらはなこの頭に投げるようにして乗せた。

ーー 喜怒哀楽、というか表情の変化があまりないはなこは、双子で言えば治タイプで、親友との会話で冗談を言ったり、ノリツッコミをしたりもするが、基本はおとなしい。

その上、思ったことはハッキリと言うタイプなので、双子が行動を共にしていても、特別に扱っていても、つけ入ろうとする者が必ず現れた。

「で、また地雷踏んだん?」

治の肩に腕を置いてもたれかかったまま、はなこのことを知り尽くしている侑がニヤニヤと笑っている。

『ツムサムのタイプ教えて言われたから、自分らみたいなん好きちゃうと思うでって言うただけ』

治に緩く投げられたタオルを首に巻いたはなこに「今日もしっかり地雷踏んできたんやな」と治。二人とも、はなこを心配したり庇ったりする様子はない。

ーー この時点では。

「お前なんとも思てへんもんなあ。キャンキャン鳴いとる犬が鳴き止むん待つみたい感じやもん」

「ツムとよう似とるわ。お前ら他人に嫌われようが陰口たたかれようが、まったく気にせえへんもんな」

「だって、どないでもええやろ。他人にどう思われようが、俺は自分のやりたいバレーができたらそれでええねん、な?」

『いや、ツムと一緒にすんのはアカンくない?』

「なにがアカンねん言うてみぃ!!!」

侑ははなこをヘッドロックし、治はそんな二人から離れて壁にもたれた。




侑の腕から脱出したはなこは、体育委員として招集を受け、二人の元から去った。

残された双子は壁に背を預け、はなこの背中を見つめていた。

「バスケ、男女合同らしいでツム」

「知っとる知っとる」

侑は顔を動かさず、視線だけを二組の学級委員長率いる女子軍団に向けた。

「とりあえず叩き潰そか」

顎を引き、金髪の前髪で目元が少しだけ隠れる。その前髪の奥から覗き込むようにして女子軍団を見る侑の目は、酷く冷たい。

その隣でよっこらせとしゃがんで、ヤンキー座りになった治のターゲットも同じだ。

「せやな」


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