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オリエンテーション合宿2


「ハナ一緒座ろ」

輪になって話している宮兄弟、角名、銀島、そしてはなこの五人を見ながらキャッキャと騒ぐ女子軍団を見て、先手を打ったのは治だった。

「はァ??お前はパンチラ喧し豚と座っとったええねん」

「なんで俺があんなんと座らなアカンねん」

侑はすかさず、別にええけどと言いかけたはなこの前に身を乗り出し、治を睨んだ。

角名と銀島は侑の言い放った「パンチラ喧し豚」に爆笑しているし、侑の制服のブレザーに視界を奪われたはなこに関しては『自分らホンマに人でなし…』と冷静な顔でつっこんでいる。

そして、『ツムはまず、嫌いなひとに豚っていう癖なおさへん?』と続けたはなこに、侑は乗り出していた身を元に戻すと、今度ははなこの方を見て「いや、豚は豚やろ」と真顔で返す。

『最低やな。…まぁ取り敢えず、侑は銀ちゃんと座ったええやん。で、はなこと治と倫太郎は一番後ろの席。これで解決』

双子の喧嘩が始まる前に、さっさと話し合いを片付けたはなこに、銀島はさすがはなこや!と、両手を銃の形にして、バキュンとはなこを打ち、はなこも同じようにして銀を打ち返してノった。

入学してまだ一ヶ月弱だが、双子が本気で喧嘩しだしたら手をつけられないのは銀島も角名ももう知っている。

だがしかし、はなこの向こうで体育座りをした治が真顔で「せやな、ツムは隣のクラスやし根本的に関係あらへんもんな」と余計な一言を言ったので、侑は再び目を釣り上げた。

「ぐぬぬ……!」

「俺とはなこが座ろうが座らまいが、な」

「腹立つなァその顔。でも、顔面サーブ欲しいて書いてあるなァ、その顔」

『あ、ほらバス乗るって』

はなこの背後に隠れるようにして、勝ち誇った顔でニヤリと笑う治に侑は今にも飛びかかりそう。

我儘かつ自己中な侑は、自分がいないところで治がはなこと座るのが絶対に許せない。

「あ!ええこと思いついた〜」

今にも噛みつきそうな狂犬の顔をしていた侑は、ポンと手を叩くと、「せんせー!」と、機嫌のいい顔で列の一番前まで走っていった。
嫌な予感がした治は、「はよ乗ろ」とはなこの制服を引っ張るが ーーー 時すでに遅し。

「せんせー!あんな、俺ら男子バレー部で今度の夏の総体の話せんなんのやけど、俺と銀、二組のバス乗ったアカン?俺ら一年からスタメン狙っとんねん〜」

ーー このクラス代表して頑張らんと!
…なんて、5歳児のように純粋な笑顔を担任の先生に向ける侑に、治はアイツやりやがったと心底嫌そうな顔ではなこの腕を引く。

『え、ツムこっち来る気なん?早よ乗ろ早よ乗ろ、倫太郎も!後ろの席とろうや!』

侑が来たら煩くなるのは目に見えている。
治に腕を引っぱられるはなこは、「嫌がりすぎ」と笑う角名のブレザーをしっかりと握って道連れにした。



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