テスト期間18-中学双子編
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一人でボールをいじっていた侑をの元に行ったはなこ。治が二人を遠目で見ていると、突然侑が驚いた顔ではなこを見た。
はなこが何を言ったのかはわからない。
しかし侑は、それに対して真剣な顔で驚いてはいるが、怒ったりうっとおしそうな顔はしていない。恐らく、先輩やチームメイトが侑に言ってこいと頼んだ「侑の口と態度をなんとかしろ」の話ではないなと治は推測する。
そしてそのあともしばらく見ていると、二人はなにやら楽しそうにケタケタと笑い合っていた。
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部室で着替える時、隣ではあからさまに機嫌の良さそうな侑がテキパキと着替えていた。
「なんやねん?早よ着替えろや」
「言われんでも着替えるわ」
治の視線に気がついた侑は「見んなや」とさっきまでの機嫌のいい顔を崩す。治は益々気になった。あの時二人がなんの話をしていたのかが。
まさか、コイツら…付き合った?
はなこが告りに行って、ツムはそれにビックリして、そのあと付き合ったから二人ともめっちゃ楽しそうに笑ろとったんか?
「ツム、お前ハナとなに話しとったん」
なに?気になるん〜?なんて軽口を叩いてくるのは目に見えている。できれば聞きやすいはなこの方に聞きたかった。しかしこの気になる気持ちを抑えることは、中学二年の治にはできなかった。
「なんでもええやろ」
照れるでも、軽口をたたくでもなく、思ったより普通の口調で答えた侑に治は益々分からなくなった。てっきり付き合ったと自慢してくるか、照れるかの二択だと思っていたのに。
いや、まだわからない。
「フーン。付き合ったんか思たわ」
「…なッ!はぁッ!?んなわけないやろ!」
当然この反応に治は「いや、そこで照れるんかい」と心の中で突っ込む。
そして同時に、" よかった " とも思った。
侑がはなこと付き合っていないことに安心している自分がいた。
小学校の時、クラブで初めて会ったはなこに一緒に一目惚れした。最初はどっちが告るかとか、付き合うかとかで喧嘩したりもした。
それでも結局、侑も治も付き合うどころか告白すらしていないのは、侑と治は選手として、はなこはマネージャーとして、意識的にも無意識的にも三人で変わらずバレーを頑張る関係を望んだからだ。
しかし、告白する気がなくても、小学校の頃からはなこの事が好きなのは治も侑も同じで、それは双子の中の暗黙の常識。万が一がないとは言い切れない。
だからこそ、治は安心した。
万が一が来なくてよかったと。
「口も態度も悪いボッチに構ってくれるヤツがおって良かったな」
「ァア!?なんやねんさっきから!お前アレか?ハナと俺が話とんみて嫉妬か!?ダッサ!男の嫉妬ダッサ!」
「嫉妬ちゃうわ。だいたいお前こそ中二にもなってまだハナに心配されるとか、いい加減大人になった方がいいんじゃないでちゅか?あつむくん」
「なんやねん!」
「お前がなんやねん」
ーー と、はなこが関与した喧嘩はこれから先、もっと増えていくのであった。
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