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テスト期間13-北編


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「北」と書かれた表札を、はなこは約一年ぶりに見た。さっきまで並んで話しながら歩いていたけれど、この表札が見えてからは北のうしろについて歩く。

去年と変わらず綺麗な玄関を見て、きっとあのおばあちゃんが毎朝掃いているに違いないと、少し緊張しながらはなこは思った。

北が玄関を開けて「ただいま」と言うと、すぐに割烹着姿の北の祖母が二人を出迎えた。

『こんにちは…あの、去年も編み物を教えていただいた、北先輩の後輩の七志はなこです』

「久しぶりやねえはなこちゃん。ちゃんと覚えとるよ。ちょっと見いひんうちに、偉いべっぴんさんなったなあ」

『そんなことないです…』

少し緊張した笑顔で挨拶をしたはなこに、祖母がとても嬉しそうに微笑む。はなこは照れ臭そうに笑った。

「寒かったやろ?上がって上がって。信ちゃん、手洗うとこ教えたげな」

「うん」

祖母がトコトコと忙しなく向こうの部屋に入って行ったのを見送ると、北も「上がってええよ」とはなこに声をかける。
脱いだ靴を北のスニーカーの近くに揃えたはなこは『お邪魔します』と北の家に上がった。

「なんで緊張しとん?」

『えっ…してませんよ…』

緊張していいないそぶりをしていた筈が、北にはお見通しだったらしく、北はキョトンとした顔ではなこを見ている。

「緊張とは無縁のキャラやと思てたんやけどな」

『それどんなキャラですか……』

ーー 緊張するに決まっている。
男子の家に遊びにいくのは慣れているけれど、同じ男子でも北信介は稲荷崎高校男子バレーボール部の主将であり、" 先輩 "なのだから。
そういえば去年はもっと緊張したなとはなこは思い出した。

「大会ん時とか、緊張してへんやん」

『…すいません』

「いや、褒め言葉や」

結局、微妙に緊張したまま案内された洗面所で手洗いとうがいをすると、今度は居間へ。言うまでもなく洗面所も居間も埃一つないといっても過言ではないくらいに綺麗だった。

『おじゃまします』

ちゃぶ台にはすでに三人分のお茶と、ぽってりとした干し柿が用意してあった。

『今日、北先輩に干し柿もらいました。でもあんなにたくさん…貰っていいんですか?』

「ええよええよ。家族にも分けてあげて。これも食べて食べて」

『ありがとうごじいます。じゃあ…いただきます』

祖母は濡れた手を拭きながらよっこらせとちゃぶ台に着く。すると、部屋着に着替えてくると言って洗面所のところで別れた北が戻ってきた。
ちゃぶ台の前に正座して座り、「いただきます」と両手を合わせて干し柿をとった。

『…美味しい!えっ、美味しい!?』

「ほんまあ?そんな喜んでくれたらおばあちゃん、めっちゃ嬉しいわあ。遠慮せんとどんどん食べて」

思った以上に美味しくて驚いたはなこは、目をまん丸にして祖母を見ている。
北はそんなはなこを見てから、熱いお茶をすすった。

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