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テスト期間4-登校編


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「侑、秋の中間テストさんざんやったやろ。あのとき、赤点のやつは大会出さへんて言われて、俺が先生にどんだけ頭下げたか……」

『あー、ありましたね』

「なんでテストちゅうんはかならずデカい大会の前にあんねん……。じゃまくさい……」

前回の中間テストで色々大変だったことを思い出した尾白は、今回もそうなる気がすると未だに肩を落としている。

しかし先輩の気苦労など気にする様子もなく、
全国ナンバーワンセッターは謙虚さとは無縁の顔で言うのだった。

「ええねん、俺はバレーで大学行くねんから、テストの結果とか関係あらへん」

『せやから、話聞いとる?赤点とったら全国大会出られへんねん。結果出せへんかったら推薦もなんもないて、何回言うたらわかるん?』

だから!と言いたくなる何度目かのこのやり取りに半分本気でキレそうになったら尾白の代わりにはなこがそう言うと、まるで今日初めて聞いたかのような顔で「マジか!」と侑。
周りは呆れるしかない。

「なに、今さらメチャメチャ新鮮な顔して驚いとんねん!!何度も言うたやろ!!」

しかし侑は、謝るでもなく言い返すでもなく、キレる先輩に向かってにっこりと笑ったのだった。

「ありがとうな、アランくん!はなこも!」

「……な、なに急に、素直になっとんねん……」

『礼より結果』

想定外のリアクションに動揺した尾白は、淡々と答えるはなこよりピュアの心の持ち主らしい。

「そんなん……許してまうやろッ!!」と大声で叫んだかと思うと、他の生徒たちをかき分けるようにして校門へ駆け出したのだった。

エースの後ろ姿を追いかけて、侑も駆けだす。

「なんで逃げんねーん!」

みんな、朝から元気だった。
ものすごい勢いで小さくなっていくふたりの背中を静かに見送ると、主将の北は後輩たちに言った。

「そしたら、行こか」

『はい』

「そういえばはなこ、干し柿好きか」

『はい、好きです。今シーズンですよね』

「なら今度持ってくるわ。ばあちゃんが今作っとんやけど、はなこにも食べさせたいて言うとるから」

『ホンマですか!いやでも、むしろ私の方がお世話になっとるのに、悪いですよ』

「いや、寧ろ貰ったって。……ごっつあるから」

ほな、しっかりテスト受けやと後輩に伝え、北は先に行ってしまった。
北の姿が見えなくなったくらいで、待ってましたと言わんばかりに治が口を開く。

「世話になっとるってどゆ意味?北さんと仲ええ思てたけど、北さんのおばあちゃんとも知り合いなん?」

「それスゲー俺も気になった」

『あーうん。一年の冬に、北さんのおばあちゃんが作った毛糸のコースターもろてんけど、そん時北さんに編み物出来るようになりたいんですってなんとなく話したら、家来るかって誘われて、行ったら北さんのおばあちゃん編み物教えてくれて……みたいな?何回か行って教えてもろてな。めっちゃ優しいおばあちゃんやで』

現、主将の北信介のおばあちゃんに編み物を教わっていたとはいえ、何度か北の家に行ったのは事実。そしてそれを全く知らなかったこの場の二年生はマジかと驚いている。
あの人、人呼んだりするんかと。いくらマネージャーや言うても、女子を…と。

「怖。お前、コミュ力エスパーやな」

『君の片割れ程やないと思うで』

「アレはコミュ力っちゅーか、侑ワールドの侑語やから」

「あーたしかに。そしてそれを万国共通誰にでも通じると思ってる」

『そして更に通じないときは相手に非があると思っている』


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