宮家7
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むくりと起き上がった侑は頭に投げられたクッションを鷲掴みにしてすでに臨戦態勢。
ーー が、そこで気がつく。治の太ももにはなこの頭があることを。
「お前……俺がちょっと寝とる間になにさらしとんねん」
侑の怒りは、治がはなこに手を出したとか治がはなこに友達以上の事をしたからではない。
小学校の頃から一緒の親友は女で、可愛い。
同じ部活の部員同士であり親友という関係を双子は無意識的にも意識的にも選んでいるが、もしもはなことそういう関係になるなら絶対に自分だと思っているし、自分達以外の他人は有り得ないとすら思っている。
つまり侑の怒りは、簡単にいうと嫉妬だ。
「俺からとちゃうわ。はなこが乗ってきたんや」
「知らんわ。早よ退けや」
「なんで退かなあかんねん」
寝起きということもあって割と本気で怒っている侑に治も感化され、キレる。
はなこに膝枕しているのが気に入らない侑に、それを察した上で退いてやるものかと治。
「大体お前の硬い膝枕とかなんの需要もないねん」
「はぁ?むしろ筋肉ついてへんふにゃふにゃなんより絶対寝心地ええわ。この気持ち良さそうな寝顔見たらわかるやろ」
「その顔は気持ちええと錯覚しとるだけや!どうせお前の息子はポートタワーなっとんやろなぁ!?下心見え見えやねんこのムッツリドスケベ!」
くだらない言い合いはどんどんヒートアップしていき、治ははなこがいる事も忘れて勢いよく立ち上がる。
「はぁ!?なってへんわ!侑くんはムッツリどころかオープンスケベやろが!!」
『……?(うるさい…)』
頭がカーペットに落ちるのと同時に目が覚めたはなこ。その視線の先では双子喧嘩している。
寝ていたけど、次第にヒートアップしていく大声の喧嘩はなんとなく聞こえていた。
二人との付き合いは小学校の頃からで、親友だ。毎日一緒に登下校をして、部活も一緒で、たまにあるオフは家に集まってゲームをしたりする。
いつも一緒 ーー それは私にとっての当たり前。
だからこそ、自分から甘えてしまった。
こんなに大喧嘩になるなら今後こういう事を自分からするのは控えた方がいいなとはなこは反省したのであった。
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