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宮家6


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『痛』

ーー コツン。
当てないように投げたつもりが、見事にはなこの額に、しかも菓子の箱の角っこがクリティカルヒットした。思わず治は吹き出しつつも「あっごめ」と謝る。

はなこは両手で額を押さえてうずくまっているかと思いきや、さっきより増えた机の上の物を落とさないようにズルズルと芋虫のように動きながらコタツの中へと消えた。
コタツの中には侑の脚もあるだろうに、それでもはなこがすっぽり入れると言うのはやはりサイズか。

すると、まだ足を入れていない治の前にコタツ布団がむくりともりあがり、そこからはなこの顔が出てきた。
菓子の箱が当たった額は赤くなっている。
治はそんなはなこをスナック菓子を口に運びながら見下ろしている。当然侑は爆睡中だ。

「なんですか?芋虫さん」

『痛かった』

「俺も当たる思わんかった」

パリ、ポリ、パリ、ポリ。
治がスナック菓子を食べる音が部屋に響く。
コタツ布団から頭を出すはなこは眠そうな顔で、しかししっかりと治に目で訴えかけながら自分の頭の少し前をトントンと叩く。

こっちに来いという事だと理解した治はスナック菓子を一枚口に運びながらはなこが叩いたあたりにゆっくりと動く。

『もうちょいこっち』

「はぁ?」

ほんの少しコタツの中に後退しながらもっとこっちに来いと要求するはなこが一体何をしたいのかわからない。
はなこがそこにいる時点で、というかその先には侑もいるし治は現状コタツに入れないのに。
仕方なく前に出てやるが、勿論侑に頼まれたら絶対にやらない。

治の太ももがコタツ布団に入った時だった。
靴下を履いた足の先から、足首、脛、膝、そして太ももを髪と服が擦れる。
コタツ布団で隠れる治の太ももにはなこが頭を置いた。

「・・・。」

あったか〜いと言わんばかりにモコモコのコタツ布団と治の着ている分厚くて柔らかい部屋着に頬を擦り付けるはなこは動物か何かか。
黙ってやらせてはいるが、完全にスナック菓子を取る治の手は止まっている。

なぜならいつもスキンシップは自分(と侑)からばかりで、はなこからしてくることなんてほとんどないからだ。

はなこには歳の離れた兄貴が三人いる。それは治も侑も知っていた。
うち二人は侑と治にそっくりな性格で、喧嘩のたびにはなこも巻き込まれる。
もう一人の兄ははなこだけに頗る優しく、いつも喧嘩に巻き込まれるはなこを助けてくれる。
そんな兄に甘えるクセが、眠気から引き出されてしまったのだった。

「おい侑、起きろや」

治はこのむず痒い状況をなんとかしようと思った。しかし今自分の太ももに頭を置いて気持ちよさそうに爆睡するはなこを起こす気は起こらなかったので、とりあえず手短にあったクッションを侑の頭めがけて投げることに。

「……った…」

起きたのは、半ギレの侑 ーー。
きっと後で後悔する。侑を起こさずに占領していればよかったと。

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