宮家4
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「最近ホンマ乾燥するわー」
何戦目かの対戦に飽きた侑はコントローラーをコタツ机に置くと、すぐ横においてあるハンドクリームをとった。
自己中心的でマイペースでワガママで授業中は寝倒し、テスト前は全く勉強しない。
そんなダメ高校生の侑が唯一人並み以上にやるのはバレーに関する事だ。
セッターは指命やといいながらハンドクリームを大きな手の指先に塗っていく侑。
その手でその辺触るなよとコタツの中に下半身を格納した治が注意する。そのせいでコタツに入れなくなったはなこ。
『治脚邪魔』
「ごめんな、足長いねん俺」
全く出る気配のない治は寝転んだまま必死にゲーム画面を見つめながらコントローラーのボタンを連打している。
『侑、治退かして』
「ハナこれ塗ってや。なんか全然なくならへん上にめっちゃベタベタする」
汚いものを触ったみたいに指の感覚を開けてにぎにぎしている侑に、ゲームをしながら「そんくらい自分で塗れや」と治。
『ベタベタやん。嫌やわ』
ジト目で侑のテカテカになった手を見つめるはなこはコタツの横から一歩も動く気は無い。
「はよ!頼むって!高保湿やで?お前の手ももれなく潤うで!」
必死な中でも笑いをとってくる侑に『いらんわ』と笑いながらこたえるはなこ。
「なーーもーホンマに!はよ!このままじゃなんも触られへん!」
『保湿パックやん。物は考えようやで』
ゲームに必死の治、クリームを塗ってもらおうとついに立ち上がってはなこに迫る必死な侑、そこから逃げ始めるはなこ。
「ほら、はよ」
が、双子の二人部屋の中で逃げられる場所なんてないわけで。すぐに壁の隅に追いやられたはなこは壁に染み込みそうなくらいに体を押し付けて侑を嫌がる。
『むり!治!おさむ!侑が!』
「塗ってくれな付くで〜」
そんなはなこを侑は楽しそうに両指をグニグニと動かしながら追い詰めた。
その時、ベシッと侑の頭にクッションが激突する。
「部屋ん中でおっぱじめんなや気色悪い」
「いった…!お前の顔面に付けたるわ!」
これは部屋で走り回って侑が治の顔面にクリームを塗りたくるやつだと判断したはなこは『あー待って待って。ここで喧嘩はやめよ。ジュース溢れるから』と冷静に止めに入る。
しょうがないなぁと元いた位置に座ると、右手を侑に向けて差し出した。
『お手』
「ワンワーン!」
治に飛びかかろうとしていた侑は上機嫌でコタツのはなこの隣にジャンプで着地した。
「よかったな、飼い主が優しくて。俺がお前の飼い主なら即保健所連れてくわ」
「なら飼うなや!犬がかわいそうやろ!」
「お前が犬やったらの話や言うとるやろ。お前以外の犬ならめっちゃ優しいするわ」
『あっ…ちょ、ツム動かんといて!治はもうええから黙ってゲームしてなさい』
「オカンか」
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