ヤンキー女
?「そういやあの面白い子さ、居合道部だって!ヤバくね?」
「……誰」
隣を歩く古森が唐突に話を振ってくるのはいつものこと。佐久早は古森のいう"あの面白い子"を記憶の中から探るが、生憎バレー部以外の人間に、、というかバレー以外ほとんど興味がないため、全く思い出せなかった。
「え!?今日喋ったろ2時間目の休み時間に!」
「………あー」
ーー佐久早は思い出した。あのマスクヤンキー女かと。
面白いとは思わないが普通じゃないのは確かだ。睨み返すどころか負けじと言い返してきた女子はアレが初めてだし。
「あのヤンキー女か」
「ヤンキーはやめろって。でもあの子可愛い顔しておっかないっていうか、まさか佐久早に向かって言い返すとはな!…まぁ佐久早理不尽だから気持ちはわかるけど!」
「…」
「でもあの子可愛くね?」
「どうでもいい」
そんな佐久早の返答にも慣れている古森は、「いやー、思い出すと笑えるな」とまた腹を抱えて一人で笑い始めた。
「笑いすぎだろ」
「…っいやだって面白くね?俺、明日も話しかけよ」
「騒がしくなるから俺の隣でやるなよ」
「いやいや、佐久早も話そって。絶対面白いから」
「面白いのはお前だけだろ」
ーーこの時は考えもしなかった。まさかあのヤンキー女と長い付き合いになるなんて。
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