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赤鬼の保護対象
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____________危険が好きだと自己暗示をかけるうちに、感覚がおかしくなってしまったのだろう。

違う。好きなんかじゃない。この子は誰よりも危険が嫌いだ。嫌いだからこそ、危険の中に入って身を隠そうとする。


『なにもしないから離して』

「はいはい」

殺気をなくしたはなこから手を離した男、粟楠会の幹部こと赤林海月。
「もし会うことがあれば報告をくれ」とはなこの世話係である九条に頼まれて早数年が経つ。勿論それだけが理由で気にかけているわけじゃない。

幹部とはいえ相手は目出井の組長愛娘。
関わらない方が身のためと思うのが普通だが、赤林の性格上彼女はほおっておけなかった

「はなこちゃんさ、最近ちょっと荒れてないかい?おいちゃんにはそう見えるんだけど」

『会ったの久しぶりなのに最近の私を知ってるってことは、監視してたんですか』

「人聞きが悪いねぇ。監視なんてしないよはなこちゃんに。ただほら、おいちゃんの部下とか知り合いから聞いてね。
怪しい飲み物飲んで拐われたり、怪しい倉庫に行ったりしてる…って」

『…』

「それに幼馴染ともなんとなく距離置いてるみたいだし?」

幼馴染、平和島静雄。
暴力的だが、親しい間柄の彼がいればそんなことが起きても一人より安全だと赤林は言いたいのだろう。しかしはなこは『そんなことないですよ』と否定して微笑む。

「いや参ったね。はなこちゃんは顔芸ができる子だった。____________でも。
そんな風に隠されると余計知りたくなっちゃうねぇ?」

はなこに顔を近づけそう言ったが、はなこは怖がることも驚くこともなく『え〜困ります』と笑顔を崩さなかった。赤林の凄みに怖気ないところは流石、極道の家の娘といったところだろう。

しかし赤林としては心配この上ない。
昔、危ない薬の売人にはなこが着いて行きかけた時に今より優しめに怒っただけで
”怒らないで”なんて半泣きになりながら抱きついてきたのに、今じゃ顔色一つ変えない。それどころか躱す。
なぜこうなってしまったのか。
やはり母親のあの一件が大きく影響しているのか。

「はなこちゃん。久しぶりに今度、一緒に昼飯でもどうだい」

『えー…。また父に頼まれてるんですか?』

「違う違う。ただ久しぶりに一緒に食べたいなと思っただけさ」

『粟楠会のお店嫌ですよ?』

「わかってるって。たしかにウチの傘下じゃ、はなこちゃんは落ち着かないだろうからね。(裏ではとんでもない立場なわけだし)
店はおいちゃんに任せときな。」

『やった。』

「それじゃまた、店決まったらメールするから。夜道は気をつけるんだよ。はなこちゃんみたいに可愛い子は、ヘンな奴に狙われやすいからね」

『はい。でも、コレがあるので大丈夫です』

そう言ってはなこは短ドスを二、三回振った。

「可愛い女の子がそんな物騒な物持ち歩くんじゃないよ。なにかあったら俺に連絡を寄越しな。俺が遠けりゃ部下を寄越す。

だからはなこちゃんはその綺麗な手を汚すんじゃないよ」

『…………なんで、そんな風に言うんですか』

「はなこちゃんが心配だからさ。逆にそれ以外なにがあるっていうんだい」



そう言ってはなこの頭を撫でる大きな手。
はなこの心は、揺れた。


『……うん』



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