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泉井蘭の御登場
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____________その日の深夜、
半年以上前の自殺オフで恨みを買った女が自分を殺しにきた事を、折原は至極楽しそうにチャットではなこに教えた。そしてこうも言った。自身の期待を裏切った女のおかげで初心にかえれた、と。

『よかったですね。また連絡下さい…と』

メッセージを送信し、スマホを閉じると
何故か見知らぬ男達に囲まれていた。スマホを見ながら歩いていて、信号待ちの所にでもいると思っていたけど、どうやら違うらしい。
はなこは何故か暗がりのパーキングにいた。周りには数台の車が駐車してあるだけで、男達以外に人気はない。

明らかに怪しい武器をポケットやらカバンに入れているのがわかる彼らは、ニタリと笑った。

「大人しく拐われるか、痛い目に遭って拐われるか……選べ」

『まず誰ですか?』

「俺の彼女のツレに怪我さしたのお前だろうが」

『……ああ、臨也先輩に振られたあの子。
はい。確かに私がドスで怪我させ__________』

____________ヒュンッ。
いきなり背後からはなこを捕まえようとしてきた男をかわして、すかさず鳩尾に蹴りをいれる。今、地面にうずくまっている男は、喋っている間に捕らえるつもりだったのだろう。

「チッ。」

『そういえば一人、彼氏がダラーズって言ってましたよ。わざわざこんな人数を私のために集めるなんて……もしかして暇人ですか?』

「…やっちまえ!こんな奴半殺しでいい!!」

『ですよねっ』

はなこはニコリ笑って、どこからか取り出した二本の短ドスを構えた。そんな彼女の歪な雰囲気に、数人の男が怯む。

向かってきた数人の武器を交わし、持ち替えたドスを男に向けた瞬間…「問題でェす!」____________長身細身に黒髪オールバック、サングラスに火傷の跡という一度見たら忘れない。そんな男が突然現れた。それも、重たそうな何かを引きずりながら。

「テメェらごときがこの女に手を出しても良かったのでしょうか!?」

そして

「誰だテメェ!邪魔すんじゃ…ァアア''ァ''ーー!!!!」

重たそうな何かを一気に振り下ろした。
振り下ろされたのはハンマーで、はなこに一番最初に手を出した男の足を粉砕していた。

「残念不正解です!」

「なんだ…よこいつ……」

ニヤァと笑いながら次の獲物を定める男に『久しぶりですね、蘭先輩』とはなこは声を掛けた。

「蘭…!?泉井蘭だと!?ヤッベェ逃げろ!!」

「逃がすかよバァカ!」

走って追いかけようたした泉井に、はなこは笑顔でドスを向けて止める。彼にはこれくらいやらないと通じないと思ったからだ。

『まあまあ先輩。…それより、出てこられたんですね』

「…おう。」

目出井組系粟楠会の青崎の配下である泉井にとってはなこは粟楠会の大元、目出井組の組長の愛娘。言うまでもなくはなこ自身はそういうのをあまり気にしていないが、泉井はそれを意識しないわけにはいかない。たまたま見つけたはなこを助けたのも、それが関係している。

「相変わらず巻き込まれんのが好きだなお嬢は。…まあ元気そうで何よりと言うべきか?ここは」

小柄で可愛らしい容姿からは考えられない攻撃力と武器、そして容赦のなさを持ち合わせるはなことは、ブルースクウェアのリーダーをしていた頃からの知り合いで、よくつるんでいた。面白い女がいたもんだと。

『先輩もお元気そうですね。…そのマフラーまだしてたんですか?』

そういえば、誕生日に「プレゼントねぇのか」と冗談交じりに言った泉井にはなこがあげた青いマフラー。今、泉井がしているのはまさにそれだった。

「おう!似合うだろ!」

そう言ってガシガシはなこの頭を撫でる泉井。

「そういや俺、折原にも世話んなることになったからお嬢も宜しく頼むぜ。たしか折原とつるんでたろ」

『そうなんですか。臨也先輩とは週3くらいでつるんでますよ。多いときは泊まったりして週5とか』

「シフトかよ。………いやまて、泊まるってまさか付き合ってんのか!?(あのヤロー殺す!)」

『違いますよ。ただ、ゲームとか鍋パーティとかしてるだけです』

「…そうか」

はなこは泉井に足を潰されて気絶している男の隣にしゃがみ込んだ。

『そういえば私今、弟の青葉君とつるんでますよ』

「青葉ァ!?」

『はい。内容は彼との秘密ですから言えませんけどね』

「……あいつには気いつけろよ。腹の底では何考えてやがるか分かんねェからな。なんかあったら刺すなり焼くなりしといてくれ。トドメだけは俺が刺す!」

『え〜物騒だなぁ先輩は』

クスクス。
笑いながら、はなこは『すいませんそろそろ行きます。また会いましょうね』とその場を去った。

「物騒なのなお前もだけどな」


その声は誰にも届かない。



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