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轟、爆豪と出会う青年
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それだけで防御可能な煙の渦、創造しないゲートで自分を護りながら森を走る。
それは青離と距離をとるためであり、そうしなければ敗ける ーー 否、ジリジリと個性の動力源である視力を削り、最後には自分が死ぬと判断したからだ。

『さすがヴィラン。』

相手が "結家の当主候補だった青離" なら、
まだハンデありのオールマイトや爆豪を相手にした時の様に、一定の近距離を保ちつつ個性を発動する、基本的に退かない超攻撃的戦闘スタイルでやるつもりだった。

「そりゃ同じ個性と撃ち合うってなったら劣化版の方が逃げて当然だよね。ーー そうだ、轟君には会っときたいなぁ。…轟君…?…ああ、昔は焦凍くんって呼んでたっけ。」

しかし今の青離は "ヴィラン" 。
その上はなこの個性は勿論、戦闘スタイルやそのクセ、ある程度の手の内は誰よりも知っている。

夜嵐や爆豪といったヒーロー育成において国内最高峰の学校のトップを相手にした時とは別次元の緊張感や集中度を保ち続けなければならない。

『勝利は生、敗北は死』ーー 幼少期から擦り込まれた家訓。ここではあくまでそれが意味するものの重さを示しているに過ぎない。

ここは戦場。敗北すれば本当に死ぬ。




爆豪と轟のいる場所から少し離れた場所ではなこが青離と遭遇した頃 ーー。

「……!!!」

毒ガスを吸わないように口元を覆っていた手を思わず離してしまいそうになったのは、数メートル先に "誰かの手首" が落ちていたからだ。

「おい、俺らの前誰だった……!?」

「常闇と……障子……!!」

「きれいだ……きれいだよ。ダメだ仕事だ、見とれてた。ああ、いけない……きれいな肉面。ああもう誘惑するなよ……仕事しなきゃ。」

蹲っている不気味な人影 ーー ヴィランに爆豪と轟は遭遇する。

ヒュンッ… ーー ダダダダダダッ!!!

こんなものを前に交戦禁止なんて無茶で到底無理な話だと二人が思った時だった。
" 矢の様なモノ " がヴィランと爆豪、轟の間を前を通過し、その数本が二人の視界にあった一番大きな木に突き刺さる。
突き刺さった矢の様なモノは、青く朧に光を放っている。

「矢…!?コイツの他にもヴィランがいるみてぇだな。多分生徒じゃねえ…。」

「ゴホッ……じゃなんで"今の"仕留めねェ。」

その矢に爆豪だけはナニカを感じていた。

この矢を放った人間は恐らく轟の言う通りヴィランで間違い無い。A組にこんな個性を持つ生徒はいないし、B組の生徒がどんな個性を持っているかは知らないが戦闘禁止・マタタビ荘に戻れの指示の元、黒煙と毒ガスが充満する視界最悪の夜の森の中でこの矢を放つメリットがない。

そしてこの矢の放たれ方と、どの矢も正確に真っ直ぐ突き刺さっているところを見れば、最初からいたヴィランに加勢する意味も、二人を攻撃・牽制する意味も無いことは明白。B組の生徒がパニックで放ったとも考えられない。

ならば考えられる可能性は ーー

「えっ焦凍君?うわぁ…イケメン。
あっ俺んこと覚えてる?餓鬼の頃よくウチで稽古したじゃん?あ そういえば二人してエンデヴァーにゲロ吐かされたよねー懐かし。」

「(餓鬼の頃…ウチで稽古……親父……)………まさか…」

まるで散歩中に知り合いに出会ったような軽いノリで現れたのは、灰色の髪に黄金色の瞳をした眉目秀麗な青年 ーー 。

「……やっぱテメェかクソ野朗。」

「で、爆豪君はこの前ぶり。」

妖艶な笑み、曇って歪んだ黄金色の目は、怒りと苛立ちを含んだ赤い目と交差する。
開いた掌。五指の関節に力を入れて曲げた手は獣の様。バチバチの小さな爆発が起こる。

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