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フードの男3
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突然現れたフードの男はあまりテレビやネットを見ないはなこでも知っているヴィラン____________死柄木弔だった。

脅しによる一方的な"会話"の要求を呑み、はなこが体の力を抜いたのは早かった。むしろ驚いていたのは一瞬だけだったかもしれない。
瞬時に賢明な判断をした。
その利口な態度と判断に死柄木は満足げに口角を上げると、触れていた四指を唇から顎…そして首筋へとずらした。

『あなた…死柄木弔…って人ですよね。私に何の用ですか』

大人しく要求を呑んだとはいえ、完全に信用しているわけじゃない。無論逃がすつもりは毛頭ない。
首に触れた三本の指がそれを物語っていた。

「知ってるなら話は早い。此処で会ったのはマジで偶然だけど、お前…いや、君とは前々から話したいと思っててさ」

死柄木に回された腕が重く感じる。
周囲からすればちょっと変わったカップルがいちゃついているくらいにしか見えていないが、はなこからすれば自分の態度次第で自分を含め容易く死人が出る状況だ。周囲との温度差を感じる。

「なァ結はなこ。士傑から雄英に転校して何か変わったか?」

_______________…え。

相手は死柄木。個性の使用を躊躇っていたら間違いなく死ぬ。自分も、周りの人間も。だからどうにか腕を振り切って、一瞬で個性を発動し捕らえるしかない。という策を練っていたのだが。

この男ははなこが想像していた以上に危険だ。名前、元いた学校と今いる学校。おそらく彼ははなこの素性を相当詳しく知っている。
会ったのは偶然と言っていたが、結局は話すつもりだった。

この男には今考えた様な作戦はおろか、この距離では抵抗することもかなわないだろう。何故なら個性の発動条件と強制的に止める手段も知っている可能性が高いからだ。

________…嗚呼。
早く答えろと言わんばかりに首に触れていた指が三本から四本に増える。

『変わった』

なんでそんなこと聞くんだろう。

「へぇ…それは良い意味で?どんな風に?」

『…勿論良い意味で。雄英にきてから、個性溢れるクラスメイトと過ごして…中には強力な個性の人も凄い強い人もいて、本気で闘ったり…話したりもして…仲良くなったり。そういうののおかげで誰かを助けたいって気持ちが今の自分にはある』

「ふぅん。"オトモダチ"か____________夜嵐イナサ以来の」

肩から回された腕と密着する身体の重み、そして首に添えられた四本の指の威圧を感じながら、視線は数メートル先のたまに人が通るタイルの一点を見つめて淡々と話していたはずだった。

『______________…っ!』

気づけばはなこは立ち上がっていた。
なんで、なんでその名前を…なんでそこまで知っているのか。言葉より先に身体が動いていた。

「痛!えっ……だ、大丈夫?…顔色悪いけど…」

突然立ち上がって踏み出したはなこに、たまたま通ったカップルの彼氏がぶつかる。どう見たって悪いのははなこだが、今のはなこに謝る余裕はない。
地面に心配そうに覗き込むカップル

「あぁ…すいません俺の彼女が。体調悪いのに急に立ち上がるから」

「あっ、そうなんですね」

カップルの彼女の方も心配そうにはなこを見つめている。
________________" 違う "
瞬時に浮かんだ台詞は決して口には出来ない。肩に回された手は、心配そうにはなこを見下ろしているカップルや周囲の客からすれば、彼氏が体調の悪い彼女を支えているように見える。
しかし実際には、余計なことをすれば殺すという脅しでしかない。

結はなこは逃げられない。


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