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フードの男、終幕
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肩に回された手。
死柄木に連れられるがままに、一際人気の少ないベンチに腰掛けた。反射的に動いてしまったとはいえ、今のでよく分かった。この男からは離れない限り絶対に逃げられないのだと。

「安心しろよ結はなこ。話が終われば"今日は"解放してやる。だって大事なスカウトだもの」

________…"今日は"。

『………なんで…なんでイナサ君のことまで…どうやって調べたの…』

「君の兄貴から聞いた。家と縁を切った"元兄貴"…っていえばわかるか?そいつもちょうど昨日敵連合入りした。

……にしてもその反応からしてやっぱり夜嵐イナサは君にとっての"特別"なんだなぁ」

首に巻きつけた指が弄ぶように三本と四本を繰り返す。

「安心しろ。そいつには興味ないから」

『……じゃあなんでイナサ君の話したの』

「…あぁ。…夜嵐にしろ雄英の連中にしろ、
それは"果たして友達といえるのか"…と思ってさ。
ヒーロー育成最高峰の学校にいながら、ヒーローに対する憧れは愚か 興味すらないヤツが、雄英に入ってヒーローになる為に300倍の倍率を突破してきた強い意志を持ったヤツらと"同じ"だと思うか?」

________________…固まった。思考が。

その言葉はまるで、気化した猛毒のようだった。
耳から入ったその猛毒は熱い鉛のようにゆっくりと、しかし確実にドロドロと流れ込んで心を覆ってゆく。
深い海の中に沈んだみたいに身体はズンと重くなり、周囲の音が遠くなる。
はなこはその毒に対する抗体を全く持っていない。何故なら全て"彼の言う通り"だからだ。

__________________ニタァ、

図星を突かれ、完全に目から光が消えてしまったはなこの表情に死柄木の口角が上がる。

「ヒーローになりたいわけじゃない。興味もない。憧れもない。でも最強のヒーローになるべくして過酷な環境で育てられ、ただ言われるがままに生きてきた。全ては家の自己満足の為に、だ。だから君は"どこに行って何をしても空っぽ"のまま。」

死柄木は壊れ物を愛でるように、包帯の巻かれたはなこの左腕を撫でる。

それはまるで毒を染み込ませるように。

「ごめんな。でも俺は別に君を攻めたくて言ってるんじゃないんだ」

『………』

「君の________…いや、はなこ。お前の心に空いた穴は、家が望む"未来(ヒーロー)"には埋められない。でも俺なら埋めてやれる。何になるべきなのか、その力が何の役に立つのか…知りたいなら俺の所に来るといい」

そして死柄木ははなこの頭をひと撫でして、ゆっくりと立ち上がりその場を去った。

「俺はお前の味方だ」と言い残して。
はなこの手のひらには連絡先の書かれたメモ。


【死柄木遭遇編、終】



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