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テーピング22
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カードキーをドアに触れる。
ピと短い機械音の後、鍵が解除された。
ドアの取っ手を引いて部屋に入り、歩きながらほとんどの照明が消えて薄暗い室内を見渡すが部屋にはいない様子。
バルコーニへ出られる大きな硝子戸が少し空いている。ルームキーと首にかかっているタオルをテーブルに置いてバルコーニに出ると、真っ先に見えたのは海だった。

「…」

視線を横にずらすと、バルコーニのソファでおそらくスマホを触っている間に寝落ちしたはなこが寝転んでいた。
慣れているとはいえ、真剣を扱う彼女の集中力は計り知れない。

栄美は転げ落ちたスマホを拾ってスウェットのポケットに入れ、はなこの首と膝裏に静かに手を入れて持ち上げ、運ぶ。
これで起きないということはよほど疲れたのか、強い眠気がきたのか。________…子供なのか。とりあえずベッドまで運ぶ。

『……すぎま、る?お風呂…上がったの』

ベッドに下された振動で目が覚めるが、強い眠気にはなこは片眼だけ薄っすらと開けて自分の隣に座る栄美を見上げる。栄美はそんなはなこを「…お前スゲー眠そうだな」と笑った。

『杉丸に前髪がある』

いつもほとんどあげてるのに。
そう、ふにゃっと笑いながら起き上がるはなこに、ワックスの付いていない柔らかい前髪を触りながら「そりゃ風呂上がりだからな」と栄美は言う。

『杉丸、手はもう大丈夫?』

「おー。はなここそ大丈夫かよ。眠いんじゃなかったのか」

こうして一つの部屋に二人でいるのもそうだが、はなこは人の名前には基本的にくんかちゃんを付ける。でもただ一人だけ呼び捨てにしている人物がいた。
____________…永徳学園カリスマ五人組、
コレクト5の栄美杉丸だ。

『治った』

「治るってなんだよ」

ぶはっと吹き出す栄美にはなこもつられて笑う。あんなにも秘めていたのに、最近のはなこはよく笑うようになった。

「なんかお前、前より可愛くなったな」

『………』

いきなり普通の表情でそんな事を言われても困るわけで。その表情からはどんな感情で、どんな理由があって言っているのか、その言葉にどんな意味があるのかが全く掴めない為、はなこはパチパチと瞬きを繰り返し、小さく口を開けたままポカンとしている。

「いや、なんか反応しろよ…」

『(そうだよね…そう…えっと…)
……杉丸、…杉丸はね、いつもかっこいい。顔もだけど、身体もカッコいいから』

「………………は?」

矢張り肝心なところで天然なはなこにいつも鼓動を急かされる栄美であった。



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