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テーピング9
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______________翌日、栄美邸。

「おっハルト」

突然の来客が同級生の神楽木晴と聞き、杉丸とはなこは昨日約束した体幹トレーニングを切り上げ、トレーニングウエアのままだだっ広い家の中を歩いていると、ばったり神楽木に出会った。

「珍しいなうち来るなんて」

「杉丸またトレーニングか」

ちくしょういい体しやがってと杉丸の鍛え抜かれたムキムキボディを睨みつつ、ラフなトレーニングウェアを着たはなこに「よ」と片手を挙げる。

そんな彼に軽く会釈しながら『こんにちは』と返したはなこ。直後杉丸がはなこの頭を腕を置きに使い始める。

「やんねーと気持ち悪いもんで。おめーはなんか顔色悪いな」

「そーか?超元気だけどな」

この相変わらず兄妹のような仲の良さに素直に嫉妬しつつも、ここで言っては負けだ。本来は自分がはなことこうなる予定だったのに何がどうなってこうなったのか…いや、思い返すのはナシだ。

「そだ、ちょうどよかった」

栄美ははなこの頭に置いていた腕を首裏まで下ろすと、そのまま肩を抱いてくるりと反対方向を向き「この雑誌みせようと思ってた」と部屋から一冊の雑誌を持ってくる。

『…桃乃園学院の追い上げ…名門に陰り・陥落の危機?』

「かなりうちの英徳はヤバイみたいだぜ。去年の入学志願者では二位の桃乃園との差がほとんどなかったらしい」

はなこが読み上げた通り、現在の英徳学園と桃乃園学院の人気の差と理由が事細かく書かれている記事に、神楽木は目を見開く。

「ほら 専門家がここにかいてるだろ?来年には1位と2位が入れ替わるって」

"王者交代"________________栄美がトントンと人差し指で差した雑誌の一言に神楽木は更に青ざめる。そんな神楽木を気の毒に思ったはなこは眉尻を下げ、心配そうに見つめた。

「な…なんてこった」

「学校内の施設や建物が凝ってるだけだけかと思ったらどうもそうじゃないらしい。で、桃乃園について調べたんだが、外から生徒が集まってくるのはスター生徒がいるんだってよ」

「それって________」

神楽木にはその"スター生徒"という表現にコンマ数秒で思いつく人物がいた。その考えが読めた栄美は頷く。

「だろ?まるでF4みたいだ。
桃乃園っていたら成金イメージだろ?けどその中の一人は別格らしい。馳天馬ってヤツ。
天の馬で天馬だぜ?名前までスターな野郎だよいけすかねーー!!!」

栄美はビリッビリッと雑誌を粉々に破く。
ありゃりゃと見兼ねたはなこはその場を離れ、箒とちりとりのセットを取りに行った。




戻ってきた時には神楽木はおらず、栄美に聞けば青白い顔で帰って行ったとのことだった。

「ったくお前は律儀だな」

『杉丸は自分の名前、嫌いなの?』

「そういうことじゃねーよ!」

『私は好きだよ。杉丸の苗字も名前も』

ちりとりにバラバラに破れた雑誌を集め、ゴミを捨てに行ったはなこ。

________…私は好きだよ。杉丸の苗字も名前も。

今はなこがいた場所を真顔で見つめる杉丸と脳裏にははなこの横顔が浮かび、声がリピートされる。彼女のことだ。なんと狙いも含みもなしに思ったことをそのまま言っているのだろうが、杉丸の鼓動を加速させるには十分なセリフだった。





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