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テーピング8
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不思議で、いつも何かを秘めてる。
稽古とか演武ではそれが全部解き放たれて
綺麗で強くて繊細で、
ああ、これがホンモノの強さで、
美しいってことかと思った。

アイツの秘めた何かを解消して
自由にしてやれるのは武道だけだった。
その秘めたものがなんなのか
その強さはなんなのか________…。




『ね、聞いてる?』

________…和食屋。
とりあえず口に米をかきこんでいたらはなこの話を聞いてなかった。

「ワリ!全然聞いてなかった!」

素直かと思わず突っ込みそうになるシェフは苦笑い。

『じゃあいいよ』

「んだよ話せよ!」

若干拗ねながら味噌汁を啜るはなこの目をじっと見つめながらささみにかぶりつく杉丸。両者、箸を休める気配はなし。動いたら体に必要なものを食べるという二人の利害が一致している。

『…いい』

「はぁ!?俺に話せねーことかよ?」

いや、さっき真剣に話してたのに全く聞いてなかったの君だよねとまたもや突っ込みたくなるシェフ。

「お前と一番仲良いの俺じゃねーのかよ」

『だから話してたんだけど?』

「…悪かったって。だからもっかい頼む」

『……だから、今度のホテルリゾートのオープニング、一茶くんのあとで私もショー出ることになったって話』

「マジで!?一番前で見るわ」

と、素で言うのだからはなこも反応に困る。
今は一緒にいるのが当たり前になっているが、
思い返せば彼はなぜ中等部のころから
こんな自分と一緒に居てくれるのだろうか。
居てくれることはとても嬉しくて楽しくて
嫌なんて思ったことは一度もないけれど。

でも、どうしてなんだろう。
なんでそんな言葉をあっさり言えるんだろう。
なんで私に言ってくれるんだろう。

こんな、わたしに_____________…。

「写真撮ったる」

左手でお茶を飲みながら、右手のスマホをヒラヒラさせる栄美はそのままの表情で「つか、ツーショット。俺以外と撮んな」と続ける。

『え…っと』

「いやそこはうんって言っとけよ!」


若いなぁ、と微笑ましくなるシェフであった。


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