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____________現六代目水影、長十郎宅。


想像通りのシンプルさに、想像以上の広さ。
一番驚いたのは、リビングの写真立ての隣と
ソファに座らせた可愛いぬいぐるみ。


そういえば、元五代目の照美メイが
「長十郎は根が優しいから結構ヘタレな所もあってね。六代目に就任してからそれもすっかり鳴りを潜めて男らしくなったのよ。」と
言っていたのをなんとなく思い出す。


「今、お風呂を沸かしてきたから。出来たら先に入って」


自分に比べて、全く緊張していない様子のはなこが羨ましい。
はなこはソファに座っていたぬいぐるみを
抱きしめながら『ありがとうございます』と返す。


「気に入ったなら持って帰るといい」

『それは……、…先生のだし…』


ぱぁっと嬉しそうな顔をするはなこ。
けれどこれは師である長十郎の物。
一旦冷静になって、ぬいぐるみを膝から下ろし
もう一度ソファの端に戻した。

そんなはなこにクスリと笑う長十郎。


「いいんですよ。…それにはなこが持っている方が似合いますから」

『そんなことないです。
………………私、そんなに子供に見えますか、』


はなこは相当気にしているのだろう。
ソファの上で膝を立て、膝に顔を埋めると
長十郎の方から視線を逸らしてぬいぐるみの方を向く。

それが子供だということに気づくのは
いったいいつになるのだろう。


「…子供だなんて、思ってませんよ」


___________…トン。
はなこがぬいぐるみの方を向いていると
右半身に何かが当たる。
匂いといい感覚といい、すぐに長十郎だと分かった。


「………寧ろ、子供の方が有難いです」


そうすれば諦めもつくのに。


『子供の方が有難い?』


長十郎の言葉が理解できなかったはなこは
コテンと首を傾げて長十郎を見上げる。
はなこの額に巻かれた包帯が痛々しい。
師匠の前でくらい"痛い"とか
…言ってもいいのにと思う。


「はなこにとって僕は、水影という立場と師弟関係を抜けばどういう存在ですか」


こんなに接近して、触れ合う距離で座った事はない。
この鼓動が伝わっているのではないか。
そう思いつつも問うてみたこの質問。


『?……世界で一番好きな人』


何度聞いたかもわからないそのセリフ。
なんの含みも無いそれに、
長十郎の決心は
硬く強く確実なものになっていく。


「はぁ……これ以上の質問は無意味だし、ずるいですよね」

『???』


決心がついた長十郎は________________?




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