「もう二年は前のことだ。これまで遠目に見てはいたが声はかけられなかったから覚えていないのも無理ない。むしろ忘れるほど気にされていないならそれでも良いというか、今に至るまで謝罪も礼もできなかったこちらが申し訳ない」
しどろもどろになりながら仲直りらしきものをする主同士に担当と顔を見合わせて首を傾げていると、山姥切国広はそう言った。
二年前……ていうと主が審神者になった年だ。
本丸発足で細々としたこと含めてかなり忙しない日々だったから、記憶に埋もれてしまったことがあってもおかしくはない。
「俺が今もこの本丸で主の初期刀としてあれるのはあんたのおかげだ」
なにやら私は大層なことをしたらしい。
担当殿は訳知らぬくせに訳知り顔で頷いている。そうでしょうそうでしょう鶴丸様は凄いでしょう!という言葉が聞こえてくるようだ。
「おや覚えてないんですか」
こちらの話し声が聞こえたのだろう。
内番途中らしき格好の小狐丸、骨喰そして鶴丸国永という白い面子が寄って来た。
「人の腕を砕き首を刎ねておいて、つれないことです」
「砕っ刎ね!?」
「俺は平野と続けてやられた」
「お!君のことは光坊たちから聞いてるぜ。勉強不足の鶴丸国永だ。よろしくな」
………あ、あっあーーー!?
やっっっべ。
覚えているだろうか。
山姥切国広
燭台切光忠
骨喰藤四郎
平野藤四郎
小狐丸
この面子を見て、何か思い当たることはあるだろうか。ちなみに私は今の今まですっかり忘れ去っていた。
そうだ。よく思い出せばこの本丸の審神者はあの時の審神者だ。
私たち本丸のはじめての演練。
そこで主を嘲った同期の片割れ。
“鶴丸国永"を侮辱した審神者。
上手くいっていない引き継ぎ本丸。
「なんで鶴丸さんが忘れてるんですか。普通一番怒っていい立場なんですよ?」
「主がかっこよかったことだけ覚えてれば良い」
ぷりぷり怒る主にそう言葉を返せば顔を覆って叫ばれた。
「伊達男!!!」
伊達刀です。