頬を叩く熱。
小さな火花の爆ぜる音。

炉の中で激しく燃える炎は閉じた瞼を透かしてなお赤く視界を燃やした。

刀鍛冶の妖精がリズミカルに大槌と小槌を振り下ろすたびに鳴る澄み渡る鋼の打つ音は、この体になったからだろうか。

まるで子守唄のように心を安らげる。

父と呼べる刀鍛冶に作られてから長い時を経て愛され魂を宿した付喪神。
その分霊である刀剣男士の依代を生み出す彼ら鍛刀妖精は刀剣男士の父と言ってもいいんじゃないだろうか。

付喪神の分霊が刀剣男士なら、刀剣男士の父たる彼ら妖精は………

「もしかして、名だたる刀匠の魂。その一片だったりするのかい?」

それこそ五条国永とか。

打刀___あれは歌仙と大倶利伽羅か___を打ち終えた妖精たちにそう聞いてみると、ドヤ顔したり首を傾げたり恐縮したりされた。

妖精にも個性ってあるけどこの反応はどちらだろうか。

まあいいさ。
どちらにせよ、私の本体が彼らによって作られたことは事実だ。

「今日もお疲れさん」

持参したお供物代わりの金平糖と打刀二振りを交換して立ち上がる。

固まった腰を伸ばして振り向けば嬉しそうに金平糖に群がる妖精たちにジブリみを感じた。

彼らとの意思疎通は身振り手振りのボディランゲージだけどわりと雄弁だ。


「じゃあな、明日もよろしく。父様方」


ちょっぴり驚かしてみたくなって言ってみたらコロンカラコロン……とその小さな手から金平糖を取りこぼし、ぽかんと見つめられた。

えへへいいリアクション頂きました。
そんな見つめられると照れちゃうぜ。

反応に満足した私は刀剣倉庫にかぶった刀をしまいに行って鍛刀記録帳に記入したらあとは……万屋に買い出しか。

着替えるために部屋に向かって歩く。

昨日降った雨で濡れた地面も乾き、色彩多様な傘が干されていた。ビニール素材のそれは日の光をよく通し、色とりどりの影を庭先に落とす。その影に隠れて短刀たちがかくれんぼのようなことをしている。

こちらからは丸見えなのだが、反対からは完全に体が隠れていたらしく傘を取り込みに来た陸奥守がびっくり仰天していた。

ああいう驚きもアリだな。

笑い声が響く。

ああ〜長閑。平和って最高!万歳!


「つ、鶴さん!大変だよ三日月さんと鶯丸さんが!」


さらばグッバイ平和な今日よ。
短い付き合いだったな。
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