「そうかそうか、小夜と山姥切には兄弟がいるんだな。早く来るといいな、俺も会ってみたいもんだ」
ゆるゆると会話をしながら再び厨へ歩き始める。
小夜はちょっと懐いてくれたらしく羽織りの裾を握りながら歩くのが可愛らしい。
これで粟田口を除く刀剣と交友できたわけだがさて、
主の元にたどり着くより先にずいぶんと状況は把握できた。
思っていたより複雑じゃなくて助かった。
本気で嫌っていたりしたらお手上げだったもんで、
あくまでも仕事上の関係ですってスタンスで行くことになっていたかもしれない。
それもまぁ悪くはないけど、あの主にはキツかろう。
「この先だ」
促されるままに角を曲がると芳しい香りが鼻に届いた。
同時にジュワー!と油の跳ねる音、カッカッと忙しない音も。
揚げ物か?
食材を抱えた大倶利伽羅を先頭にのれんを潜ると、そこで主がデカイ中華鍋を振るっていた。
もう一度言おう。
小柄な主が、あの細腕で、デカイ中華鍋を振るっていた。
テンポよく中のチャーハンが舞って落ちる。
あっ一瞬だけ左手を離して隣のコンロの火を調整した。
お玉さばきも玄人の域だ。
ギャップが!!!!すごい!!!
ちょっと待て奥には蒸し器もあるんだが?
料理できるって言うからてっきり家庭料理とか、ちょっとオシャレにフレンチ頑張ってみましたって感じを想像するだろう?
誰がこんな本格的な器具揃えた中華料理を想像するよ。
「驚きだな!」
「主の料理は美味い」
だろうね!?
「「ご馳走様でした」」
「美味かった」
「えへへ……ありがとうございます」
美味しかった……文句なしに。
馬当番だったらしい粟田口二振りも揃って囲んだ食卓にはパラパラのチャーハンとニラたっぷりの羽付き餃子、じゅわっと熱々スープの閉じ込められた小籠包。
盛り付けすら手伝いを申し出たら逆に邪魔になりそうな手捌き。
プロかよ。
「主は料理人でも目指していたのか?」
アやっべ。つい普通に話しかけてしまった。
内心焦ったけれど、主は少し驚いたくらいの反応ですぐに答えてくれた。
「そういうわけでもないんですけど、料理は好きで、
実家も中華料理屋で、小さい頃から見たり手伝ったりしてて」
「なるほど。これは主の家庭の味でもあるわけか」
「はい、なので、喜んでもらえてよかった」
ン"ン"ン"いい子!!
好きなことを話すなら人見知りも発動し辛いらしいし、この調子でコミュニケーションも取れるといいなと思う。