演練が始まり、それぞれが観戦したり対策を練っている頃、頭に血が昇った勢いでかっこよく啖呵を切った主は例の男性の参戦から急速冷却されたようで、現在部屋の隅で真っ青涙目の可哀想なことになっていた。

「勝手なことしてご、ごめんなさいぃぃ!」

「何言ってんだ大将、嬉しかったぜ」

「そうですよ!ねぇ鶴丸さん」

「主」

みんなが頬を紅潮させて口々に言い宥める。主に非は一切ないから当然だ。

「ありがとう。勇気がいったろう?俺たちは君の勇気を無駄にはしない。必ず勝ってみせよう」

なんせ、私たちは君の刀で、君の刀は強いのだから!
ね、山姥切。

「信じろ、主。あんたのそれが俺たちの力になる」

「……はい。ずっと、いつも信じてます」










ビーッと終了の合図が鳴る。
1戦目、新人君は奮闘虚しく散ってしまった。

2戦目、好都合Aの戦いだ。

開始の合図が鳴る。


「で、どう勝つ?」

「あっちの刀装は銃兵で固めてある。遠戦がだいぶキツイな。そのつもりの部隊編成か」

「だが遠戦をしのげば」

「少なくとも兄弟と鶴丸さんは相手より強いですよね」

「骨喰兄ならどんな作戦立てるかな……」

最初は少数精鋭でローテーションだったから練度に開きがあるのは仕方ない。
いろんな戦場に行かなくてはならなくて、ゲームのようにレベリング周回なんて出来ないんだ。それでもともと気軽に練度上げに来たんだから。

「大和守、とあと堀川も」

「なに?」

「向こうの隊長は加州だ。指揮も彼がとるだろう。うちの加州と同じとは思わないが全く別物でもないはずだ。彼なら俺たちの誰から潰すと思う?」

加州について聞くなら大和守。私も教育係として共にある時間は長いけど、刀剣時代も含めれば足元にも及ばない。
堀川は「兼さん!」のイメージが強いけど新撰組の刀としての発想はあるはず。

「兄弟は危ないと思う。一時的な隊長より初期刀が早々に戦線崩壊するのは部隊にとっても動揺が大きいから」

「僕は鶴丸さんだと思う」

「なんで?」

「だって今回の騒動、鶴丸さんは悪くないけど発端にはなっちゃったでしょ?だから一番に潰して分かりやすい武勲を主にアピールすると思うんだよね」

部隊の動揺を誘うか主へのアピールをとるか。

「でも初期刀だよ?もし山姥切さんがそんな理由で動いたら幻滅しちゃう。アッそんな事するとは思ってないからね?」

「分かっている」

「ほら短刀って可愛いじゃん?あっちには秋田とか五虎退とか乱いるし。女の人なら可愛がっちゃうでしょ?あいつならちょっとでも主の気を引きたがると思う」

初対面で初期刀の責任が強いか、主からの愛を求める気持ちが強いかは読み取れない。正直どっちもありそう。
練度の低い新人組は狙われないだろうという意見は一致した。

ならば一つ罠を張ってみようと思う。





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