任務完了ののち、全員が無事に万屋へ移動したのを見届けて私は分霊を消した。
あの審神者にはもう霊力は雀の涙ほどしか残っていないだろう。もう審神者として刀の維持はできてもそれ以外は出来まい。
そういう術を使用した。使用するように誘導した。
例え呪殺未遂が未遂ゆえに軽い厳罰で済んだとしても、秋田藤四郎の件は無かったことにならない。審神者法では刀剣男士に対する虐待、それに準ずる行いの方が罪は重かったはず。そんなことを客の一人が話してたと思う。
審神者として機能できない。
刀剣男士を不当に扱ったものを万屋で働かせることはできない。
ゆえに審神者法で裁かれた後は記憶を処理され現世に放流されるだろう。
罪人で役立たずを囲っておくほどの余裕は政府にはないのだ。
現世から隔絶された世界で年月を過ごした人間がその間の記憶が曖昧な状態でどう社会復帰するのかは知らないが、そのへんは政府がどうにかするだろう。して貰えなくても、それが刀剣男士に不敬を働いた罰なのだ。
大人しく受け入れるがいい。
カランカラン
入り口のベルが鳴ってあの子達が帰ってきた。
新メニューを考えていた手を止めてそちらを振り向けば真ん中で彼らに促されるようにつっつかれている空色の瞳とかち合った。
すっと息を吸い込んだ。
「粟田口吉光作の短刀、秋田藤四郎です。僕をクロハ様の仲間にいれてください!」
「ようこそ、そしてお帰りなさい。秋田藤四郎」
「っはい、ただ今帰りました!」
その日から、うちの従業員にはくるくると跳ねるようによく働く桃色が加わった。