ここ連日雨が続いている。
件の秋田藤四郎は従業員を引き連れて本丸へ戻った。「朽ちろ」との命令だが「朽ちてこい」「帰ってくるな」という言葉はなかったのでいつか朽ちれば出戻りOK!と揚げ足取りで無理やり解釈することで命令をほぼ無効化。残念ながらまだ審神者を主と呼んでいる状態では命令違反はできないのだ。
いや出来るけど堕ちちゃうし。
「僕に幸運は運べませんが、主君の幸せに繋がるよう頑張ります!」
健気ないい子だった……。
いつだったか人間の用心棒してた飲んだくれにゃんこ妖怪に見習わせたい。
雨のせいで客足の無い店で一人優雅にティータイムと洒落込みながら、その脳裏には分霊だか分身だか、とにかく私の力の作ったカラスから送られてくる映像が流れていた______。
「あれ、そのカラスクロハ様の?」
「そうですよ。今回は審神者を潰すのではなく資格の剥奪が目的ですから政府に出張って貰わなくてはいけません。異常な破壊が確認されたら一番早く駆けつけると思いますが」
「刀剣破壊はダメです!僕らは刀の付喪神。きっと皆さん、せめて折れるとしても戦場でと願うはずです」
「だ、そうなので。今回は審神者や刀剣の管理とは違う部署の派遣を狙います」
「店長が警戒している部署かー」
「はい。そうなると万が一見つかってしまった場合、弱い私たちでは逃げきれないかも知れないので」
「店長が見守ってくれてるってわけか」
心強いですなーとツンツン突っつく。
止めろやゴルァ!と言いたげにカァ!と一声鳴いた。
「できたら、最後に主君ともお話しできると嬉しいんですが……」
「「「まかせろ」」」
あらまあすっかり秋田の先輩気分だなぁ、微笑ましいやら気が早いやら。
ひとつため息を吐くとゆり椅子に深く腰掛けて茶菓子を一つ咀嚼した。甘い。