秋田藤四郎の語った審神者はどうしようもない人間だった。
クズと斬り捨てられるほどろくでもないわけじゃないのがさらにどうしようも無い。

普段は温厚なのに短気で何かあると暴力に走って。
審神者になりたくてなったわけじゃないらしいけど、その中にやりがいを見つけられなくて。
優秀ではないのに努力は苦手で、そのくせ自尊心は高い。

「主君はちょっと直情的で、思ってもないことを言ってしまうだけなんです……悪い人じゃないんですよ」

とのこと。しかし私たち妖怪にとって善悪なんて大した問題じゃない。感覚的にどんな感情を抱くか、なのだ。
共に話を聞いていた従業員たちは不快感が強い。
付喪神はな〜…人間愛が強いから。
妖怪は人間を愛さないとは言わないけど長く生きてるモノとして愛しく思うことはあれどそこまでじゃない。
いうなれば人間がハムスター愛でる感覚。
可愛い可愛い。手のひらでコロコロしててかわいいねー、儚い命で精一杯生きてて頑張ってるねーって。多くの神様もこんな感じなので人外とはこうなのかもしれない。


「それで、あそこで行き倒れてた理由は?」

「……主君が、人目につかないところで朽ちろって……」
「「「ギルティ!!」」」
「わ、悪い人じゃないんです!僕がちょっと失敗しちゃって……いち兄に会いたいって言ったから」

従業員組はすっかり秋田の味方だ。うちにいる子は人間に住処追われたりした子だから人間に厳しい。

と、ここで秋田が気づいた。

「あれ?人目につかないように…って言われたのに、お姉さんたちに見つかっても何ともない……」

そうだね。"人"目じゃないからね。
刀剣男士は主命に背けないとは聞いたけど、無理やり背いた場合は最悪堕ちることもあるらしい。
堕ちるといってもようは刀剣男士という新たな存在にインストールされたプログラムがバグるみたいなもんだ。
バグだからちょっと姿形がグロテスクになったりするけど、妖怪サイドからすれば暴走系の新たな妖怪誕生ってところ。

この辺、人間と捉え方が違いすぎて大変だよね。

そんなわけで何の変化もない自分に今更気付いた秋田が困惑してるのでネタばらし。

「私たちはみんな、人間じゃないわよー」

「ええ!?」

まあこんな堂々と店構えてる奴らが人外とは思わないよな。その油断をついてるわけだけど。

「はいはい、そんなことより」

「そんなことですか……?」

「秋田藤四郎、あなたはこれからどうするの?」


私とて彼が望むならこのまま翼下に入れるのだって吝かではない。

刀剣男士は守備範囲外だけど審神者との契約を切って仕舞えば刀剣男士はただちょっと弱くなった付喪神だろう。

人間の霊力で顕現できるのに妖怪の妖力で顕現できない理由はない。実際に弱りきっていた彼が今元気なのは私が力を分けたからである。

目が覚めない間、実は妖力注いじゃダメだった?とちょっとびびってた事は内緒。
すぐに目を覚ますと思ったんだよ……。


「………主君に、審神者を辞めてもらいたいです」


問いかけた言葉に秋田藤四郎は即答出来なかった。
秋田藤四郎は好奇心旺盛で人懐こい性格の刀剣男士だ。

朽ちろと言われ、戦場で刀として折れることも許されず、人目につかないところでひたすらに主の霊力が尽きるのを待つのはどれだけ苦しかったろう。

そして遂に意識を保つのも苦しくなった時、拾われた。
主からの命に当てはまらず、ここにいても良いとしてくれる存在に。

しかし本丸にはまだ兄弟や仲間たちがいる。
全てを捨てて安穏と生きるには決心がつけられない。

これからどうするのか、どうすればいいのか。
しかし望みならばはっきりしている。

審神者資格の剥奪。

「もう薬研兄さんたちが殴られるの嫌です……主君が、審神者がお嫌なら、審神者を辞めて幸せになってもらいたいです…」

「審神者は国が管理する極秘の職業。そう簡単に辞められるとは思えないわ」

「…はい…」

「方法がないわけじゃあないけど」

「本当ですか!」

「あるんですか?」

「いつも私たちがやってるじゃない?」

資格剥奪までやった事は……この子たちは無かったか。自立してった子や仲良い子の世間話ではよくある。実は私もあるんだけど。

やだな!そんなひどい事はしてないよ?ちょっと脅かしたら必要以上にビビり散らして自滅しただけさ。

え?十分にひどい?人間の基準で考えないでくれるかな!(逆ギレ

ただそれが確実に精神を病まずに、という条件の縛りゲーになるので難易度は上がるし長期戦になるかもしれないけど…
いけるいける!

「あなた達、最近ひまだったじゃない?ちょうどいいから腕試しもかねて行ってきなさいな」

「「「え??」」」

有給扱いにしといてあげるから。











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