03

「『月分祭』という祭りを知っているか?」

そう問いかけられたのは、今人気沸騰中の俳優 名取周一。彼の裏の顔は優秀な妖祓い人だ。
そして彼の前に立つ老人もまた祓い人。

【月分祭】
豊作をかけて勝負ごとをする類の祭りで、豊作の神『豊月神』
地枯らしの神『不月神』
その二神を模した村人が神の代行として勝負し、豊月神が勝ちの舞を舞って豊作を願うという人間が始めた祭りだ。
だが妖達はその祭りを気に入り、人が勝手に始めたその祭りを廃れた後も10年に1度寄り合って繰り返していた。
名取は酔狂だと笑う。

「呑気だな。不月神が勝てば不作になる。三隅の山が枯れる」

地元の呪術師が調査したところ、豊月神が見境のない祓い人に封じられてしまったらしい。 このままでは不月神の不戦勝となり三隅の地は約10年、草木の枯れた地となってしまうだろう。

「だから名取、祭りが終わるまで豊月神を探し出してもらいたい。祭りは明日だ」
「明日!?」

実行する方は驚かずにはいられない。 対して依頼する方は気楽なものだ。ホイと資料だけ渡せばいいのだから。
跳ね上がったハードルの高さに沈む名取に老人は『最終手段』。つまり神祓いをしても良いなどと恐ろしい言葉を残して帰っていった。

「随分な役目を押し付けられたな。名取」
「!」

ため息を吐いた名取と寄り添う柊の後ろに、気配無く犬面の人物が立っていた。

「詩織か。あまり驚かせないでくれ」
「名取が三隅の仕事を受けると風の噂で聞いて見に来た」

先ほどの話を言い方は悪いが盗み聞きしていたのだろう。言葉には多少の同情が含まれていた。

「詩織が手伝ってくれれば頼もしいんだけどな」
「そのつもりだ」
「えっ?」

冗談半分本音半分で言った事なのに、思ってもみなかった承諾に反射的に聞き返してしまった。

「月分祭。一度見てみたかったんだ」
「本当か?」
「しつこい。嘘を言ってどうする」

これは思わぬところで強力な助っ人が出来た。

「そういえば今日は相棒がいないんだね」
「あの子なら家でテレビでも見てるんじゃないか?あとお前、あまりドラマに出るな。知り合いが出てると内容に集中できない」
「一応俳優が本職なんだけど…」

かくして明日、三隅の山にて豊月神探しが行われることになった。

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