三隅の山を登り、見晴らしの良い場所。
自分の式を情報収集へ向かわせた名取は、柊と共に不月神一行の行列と遭遇していた。
地枯らしの神とは思えぬ美しい姿と、その側に仕える鎌を持った黒衣たち。
豊月神がいないことがバレるのは時間の問題だ。

「まずいな…というか手伝うと言った詩織はどこにいるんだ」
「ここだ」
「う、グッ!」

背後に立つ詩織に驚いて叫びそうになった名取の口を素早く塞ぐ。

「騒ぐな。私はともかく、名取は見つかればまずいだろう」
「だから背後に気配無く立たないでくれと毎回言っているだろう!?」
「どうやら豊月神が現れたらしいぞ」
抗議を無視した報告に戸惑う。

「封印されたのはガセだと?」
「それを今から確かめる」

彼女の人差し指がすっと伸ばされる。その延長線上を目で追えば小者たちが騒いでいた。

「あのご一行は」「豊月様だ」「豊月様がいらっしゃったぞ」「あれが豊月様か」

牡丹の冠に鹿角の面、仕える白い笠と衣の妖たち。 しかし草陰からそっと覗き見たその横顔は……

「あっやば!」
「ん?あ」
(( わーーーーっっ!? ))

「これは…中々面白いことに」

詩織は一人肩を揺らす。

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