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「ユリウスさぁん!!!起きて下さ―――い!!」
ユリウスのベッドに向かってフライパンをお玉で叩いて、カンカンとけたたましい音を響かせる。
ここは彼の寝室だ。仕事部屋より片付いてはいるが、複雑な図面が無造作にクルクルと巻かれて至る所に転がっている。
パロマは5時間帯後に起こせと言われていたのに、
「・・・うるさい。まだ寝かせてくれ・・・。」
「そう言ってこの前起こさなかったら、後ですごく怒ったじゃないですか!勘弁して下さい!もうっ早くおっ!きっ!て!!」
パロマはそう言うなり、彼の耳元でさらにけたたましい音を発生させる。
過労死してしまうんじゃないかと心配してしまう位、仕事熱心な彼だ。睡眠も食事だって十分に取れていない、とパロマは思う。以前も起こせと頼まれたのだが、その時はあまりに深い眠りに就いていたので、起こさずにそっと部屋を出たら、起きた時の彼の怒り様と言ったら、表現できない凄まじさだった。凍て付く大地に雷が落ちた、そんな感じだ。パロマはユリウスの冷たい怒りに身も凍え、そして、今回また頼まれたので、今度ばかりはと勇んで訪れたのに・・・・。
「・・・新しい設計図を見ていて、さっきベッドに入ったばかりなんだ。」
彼はそんな子供じみた言い訳を言って、起きる気配が無い。
そして、耳に煩い音を止めようと、寝ぼけ眼でサッと行動を起こした。その素早さは、絶対に起きないぞと胸に誓った者がタイマーを止める時の早さに似ていた。
「あっお玉を取らないでっ!くっ・・・と、届かない・・・。もういやぁっ!早く起きてぇ〜!何で私がこんな目に〜っ」
大事な料理器具を取り上げられ、パロマはベッドに乗り出すようにして腕を伸ばして反対に持っていかれたそれを取り返そうとする。するとフライパンを持っていた腕を寝ぼけたユリウスに捕また。そしてあろう事か、バランスを崩したパロマは、寝ているユリウスの上にボスっと倒れ込んでしまった。
「きゃっ、ごっごめんなさい!大丈夫ですか?!・・・えっちょっ・・ユ、ユリウスさん?」
自分の重みで、ユリウスを押し潰す体制になり、慌てて起き上ろうとしたら、どうにも起き上れない。気付くと、ユリウスの腕がパロマの背中に回って、動きを封じていた。
お玉は、ベッドより遥か遠くに投げ捨てられている。取りに行こうにも、ガッチリ拘束されて、身動きが取れない。
こんなに寝汚い人だっただろうか。起きて仕事部屋に現れる時の彼は、寝ぐせ何処ろか、衣服の乱れさえもなく、本当に寝ていたの?と勘繰ってしまう位キリッとしているのに。
目の前の胸板をグイグイ押しても、自分の身体をギリギリと捩っても、ピッタリとくっついた身体は数ミリも離れない。それどころか、更に背中に回った腕が身体に絡みついて、それだけでパロマの細い身体は背丈のあるユリウスにすっぽりと包まれてしまった。
「むぐっ?!・・・くっ苦しっ・・・・ユリウスさんっも、もしかして起きてます?!・・・ね、寝てる・・・?なんでっ・・・こんなに、うっ動けない・・・・のっ」
寝ぼけていても、こんなに力が出せるものなのか、とパロマは彼の胸元に埋まった顔を何とか上に向けると、その彼の顔が徐々に自分へと近づいてきた。


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