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「―――と言う訳で、容姿で得した事等、何一つありません。・・・ん?どうかしましたか?」
帽子屋敷とは関係のない話なので、ペラペラと身の上話をしていると、ユリウスは顔を下げて目頭を抑えている。何だか頭痛を堪えているかのようだ。
「どれだけ不幸なんだ、お前は。悲劇のヒロインか。」
「?それほど不幸ではなかったですよ?私生児はもっとひどい場所に貰われる方が一般的ですから。今思うと、何不自由無く過ごせて、ご飯も食べられて、勉強もさせてもらえて、私は幸せな方です。」
―――それに、私にはアリスがいましたし。
いつもはしつこく絡まれても自慢の足で(それが理由で足が早くなった)逃げ回っていたのだが、執拗につきまとってきていた集団に、路地裏で逃げ道を塞がれ追い詰められ、どうしようも無くなっていた所を助けてくれたのが彼女だった。力の無い彼女が罵声一つで大柄な男達を退散させたのだ。


―――ほら!背筋伸ばして、前向いて!!そんなんだから舐められるのよ。


よく家族にも叱られていたが、そんな風に怒られたのは初めてだった。


―――言いたい事はしっかり言わなきゃ。ほら、可愛い顔が台無しよ?


いつも下ばかり見ていた自分を、もっと上を見ろと叱ってくれた。
優しくしてくれたのも、一番に友達になってくれたのも彼女だ。彼女が友人になって、いろんな事を教わった。
逃げてばかりだった足が踏み止まる勇気を持った。怖くて開かなかった口が思いっきり話せるようになった。自分が変わってそれから何人も友達は出来たが、一番尊敬しているのは神父様、そして一番大好きなのはアリスだ、それだけはずっと変わらない。
学校から一時帰宅したのはアリスの姿を見かけないので、彼女の家を訪ねるのが一番の理由だった。



「それにしても、家に帰ったら両親と弟が大喧嘩していたのは驚きでしたね。弟のする事に口を挟まない両親でしたから。何だか結婚がどうとか、血は繋がってないとか騒いでいて。・・・・弟は意中の女性でもいたのでしょうか。」
「・・・・パロマ、もし元いた世界に帰れる事になったとしても、養家には絶対に帰るなよ。それこそ御礼参りに教会にでも逃げ込め。」
「?ユリウスさんがそう言うなら、そうしますね。貴方の言う事は、何だか正しいって信じちゃっています。」
意味が分からないながらも、小首を傾げて笑顔でそう言った。
(本当に人を疑わず、純粋な娘だ・・・。)
「『礼儀は忘れず』、か・・・。神父の言葉を守って、よく頑張っているじゃないか。」
そう言って、パロマの頭をポンポンと叩いた。
「そう・・・でしょうか。」
顔を真っ赤にしたパロマにはそれが何だか小さい自分に戻ったようで、ひどく恥かしく、そして嬉しかった。


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bkm


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