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弟がやんちゃな少年時代に入った頃から、パロマに意地悪をするようになった。始めは何だったか覚えてはいないが、虫を仕掛けてきたり、泥をかけられたり、そんな他愛もない事だった気がする。それでもパロマにとっては可愛い弟だったのだ。只管我慢だけしていたのがいけなかったのか、悪戯はどんどんエスカレートしていくばかりだった。
パロマが我慢出来なくなって泣き出すまで苛めて、
「やっぱりパロマは僕がいなきゃダメなんだろ?」
とふざけて言うのが弟のやり口だった。
成長期に突入すると女のパロマと男の弟ではみるみる違いが現れた。体格だったり、力強さだったり。パロマの身体が女性らしく変貌していくと、周りの者達の視線が嫌に突き差して感じる様になった。
あそこの姉弟は容姿端麗だと街で噂になり、外に出る度に異性にちょっかいを掛けられるようになった。意中の男性をパロマが横取りしたと身に覚えのない文句を言いに来る女性も出てきて、街も出歩く度息苦しくなってきたのもその頃だ。
さらに家の中ではもっとひどく、自分より話題をさらっているのが面白くなかったのか、弟の嫌がらせは酷くなる一方だった。
外出を制限され、理由を付けてやっと出られるという時は長袖ロングスカートの地味な服しか着させてもらえなかった。そんな姿で街に出て行ったら同世代の女の子には必ず笑い物にされたし、貰われっ子だから洋服も買ってもらえないとさげずまされた。
弟に何故そんな権限がとも思ったが、義理の両親は弟を目に入れても痛くない程溺愛していた。弟を生んだ時には相当の年齢に達していたし、大きくなった時には隠居と言って良い程実権を弟が握っていたのだ。弟によって交友関係もすべて把握されていたし、遅く帰った時の不機嫌さは酷いものだった。貰われて養ってもらっている身だったが、始終監視されていてはあまりにも居心地が悪く、奨学金制度がある学校に家族には内緒で受けて運よくパスし、晴れて家から逃げる様に飛び出した。
それでも、学校での批判は変わらなかった。
エリート学校に奨学金で入ったパロマはそれだけで噂になり、しかも孤児だとすぐに広がって、地位や名誉を重んじる学校の生徒達は誰もがパロマに一線引いていた。近付いてきたのは冷やかしの男子生徒と僻んだ女子生徒ばかり。学生寮があったから部屋まで追って来る不審者はいなかったが、それでも校舎の暗がりに連れて行かれそうになった事は一度や二度ではない。
そんな折、家に一度返って来いとの連絡が入って、私用も兼ねて出かけてみたら、手紙の中身はただの口実で、もう学校には行かせないと弟が強引にパロマを部屋に押し込み、鍵を掛けて閉じ込めたのだった。
弟と両親が何だか言い争う声が聞こえてきたが、もうこんな家には用は無いと昔の手口で窓からそっと抜け出して―――そして、現在に至る。


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bkm


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