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パロマの回想〜過去・・・





私は教会に拾われたと聞いた。
「パロマ。」
引き取ってくれた神父様の顔はもう覚えてはいない。
「私の可愛いパロマ。―――ここに居たのか。」
小さいが厳かな教会の前に立つ、白く長い髭と曲がった背中、そしてとても優しい人だった事だけが記憶にある。彼はパロマの頭を撫でながら
「お前は当然あるべき両親の愛情を授かることが無かったが、それでも、ここには沢山の愛が詰まって生まれてきたのだよ。」
人々に慕われた敬虔な彼は自分の身分を誇張する事無く、いつでも対等にパロマと接してくれた。顔は忘れてしまったが、あまり見上げていた記憶もない。彼はいつでも小さいパロマの為にしゃがんで視線を合わせてくれていたように思う。
「だから、お前は溢れ出す愛を独り占めせず、沢山の人に分けてあげなさい。そうしたらもっと沢山の愛が返ってくるのだから。 ―――するとどうだ?ほっほっほ、愛が溢れんばかりじゃろう?」
何度も何度も繰り返し聞かされた言葉。孤児だった自分が、回りの子供たちと全然違う自分が、その言葉で何度救われた事か。
慈愛に満ちた神父様の存在が、大きく成長した今でもパロマの心の拠り所となっていた。
「それから、もらった御恩はきちんと返しなさい。礼儀は忘れずにな。小さくてもこんなに愛らしいんだ、みぃんな、パロマを好きになるだろうよ。」
教会にいたのは本当に小さかった頃だ。
それからすぐに里親に出されてしまった。



貰われた先では、暮らしだけは格段に良くなったのは事実だ。
しかし、本当の意味での『家族』は得られなかった。
引き取られた後すぐに生まれた弟に義理の両親の愛情はすべて奪われ、まるで自分は存在しないかの様に接しられるようになった。その頃は初めて出来た父と母という存在にどうしても振り向いて欲しくて、認めて欲しくて、いろんな悪戯をしたのを覚えている。まだ幼かったのだ。小さい頃と言うのは誰だってそうだろう、パロマも例外なく感情のままに行動を起こしていた。しかし、何をやってもひどく叱られ、鍵の掛かる部屋に閉じ込められ、そして自分のしている事では両親は微笑んでくれないと幼子心で理解し・・・それから何時しかやらなくなった。


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bkm


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