03
「はぁっ・・・はぁっ・・ここはっどこなの?!」
パロマの心臓が異常にドキドキしている。
息が切れて、もう走れない。
もともとない体力のバロメーターは0まであと少しだ。それでも走る早さは誰にも負けた事のない彼女は、人をかき分け、縦横無尽に走り回り、追手を錯乱させる。
追手の姿が小さくなると、大通りからするりと薄暗い路地裏に入り込み、壁に背をピタリと押し付け、上がった息を何とか押し殺す。
「こっちに逃げたぞ―!」
「早く捕まえろ!!」
大勢の足音と大呼が大通りを通りぬける。
人の気配が遠のいたが、しばらく壁から離れずその場でたたずむ。激しい鼓動は一向に収まらず、さっき吸った砂埃と全力疾走のおかげで、喉がキリキリと痛い。
「ゴホッ!ゴホゴホッ!!」
彼女は急に咳込み出した。
止まらない咳は、カラカラに乾いた喉に、いちいち刺すような痛みを伴わせる。パロマはあまりの苦しさに前かがみになった。周りを見渡しても、都合よく水の入った瓶など見付からない。


・・・ふっと、自分の服のポケットが膨らんでいるのに気づいた。


探ってみると、何故か小さな小瓶がポケットから出て来た。入れた記憶も無ければ、瓶さえも見覚えがない。しかし中には何か透明な液体が入っている。
一瞬躊躇したものの、今の苦しさから逃れたい一心で一気に飲みほしてしまった。
「――――ふぅ〜・・・。し、死ぬかと思った。」


―――今日一日で、どれだけこんな思いをしたんだろう・・・


『死ぬかもしれない』経験等、生まれてこの方味わった事が無い。
それを一時だけで何度も身を持って知ってしまった。
しかも、どれを思っても命を落とさなかったのが奇跡だ。
(と、とにかく今はここでやり過ごそう。後で頃合いを見計らって大通りまで出てみよう。)
とパロマは思いつつも、本当は怖くて一歩も動けなくなっていた。見知らぬ土地で見慣れない衣服に身を包んだ人達。パロマは足がガクガクして、立ち上がれなかった。


息をひそめて隠れていたはずが、後頭部になにやら冷やりとしたものが当てられた。


「抵抗したら、一発で頭をぶち抜く。両手を上げて降伏しろ。」
真後ろから寒々しい声が聞こえた。
パロマは恐る恐る両手を上げると、頭にひどく衝撃が走った。どうやら何か固いもので殴られたようだ。
「・・・はい。やっと捕まえました。通報通りです。髪はブルネット、碧眼、紺地の服、・・はい。それでは・・・」
薄れていく意識の中、聞こえたのはそこまでだった・・・。





prev next

6(348)

bkm


top

「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -