16
パロマは再度ユリウスにおんぶしてもらい、来た道を帰って同じ部屋に逆戻りした。
穴があったら入りたい。
3度目でも文句は言うまい。
ソファに座ったが身体中がズキズキと痛んだ。
「前に痛めでもしたのか?足が異様に腫れているぞ。これでは歩けないだろう。」
ユリウスがパロマの右足に水に浸したタオルを当て、それから湿布を貼りグルグルと包帯を巻きだした。
「―――何から何まで、本当にごめんなさい・・・。」
パロマは半泣きで謝った。
彼には世話を焼かせっぱなしだ。こんな所で自分の鈍くささをアピールしなくても・・・。
「・・・?」
彼はまだまだグルグルと包帯を巻いている。多分ひと巻は優に巻き終わっている筈だ。包帯の端を縛ってやっと出来上がったパロマの足は、まるで大きな砲丸の様になっていた。
「ユリウスさん、これじゃあ私の足が武器になったみたいです。」
何でも完璧にこなせそうな彼が意外と不器用な一面を持っていると分かって、パロマは思わずプッと笑ってしまった。
「・・・どうせ不器用だとでも思っているんだろう。」
この部屋の事だって何か言いたいのではないのか?と少し頬を染めて話しているのが可愛らしい。一応自覚はあった様だ。
「あはは。よく人が暮らせるな、と思っちゃいました。」
パロマはちょっと気を許して、思わず本音を吐いてしまった。
ユリウス背後に黒い影が揺れる。彼の只ならぬ雰囲気に地雷を踏んだと気付いた彼女は、冷や汗を掻きつついそいそと立ち上がり、
「あ、あの〜、いろいろとお世話になりました。それじゃあ、また〜」
と言って足を引きずりつつ後ろを向いた所で、彼に腕をグッと掴まれた。パロマが恐る恐る後ろを振り返ると、
「その足ではハートの城までも辿り着けないだろう?腫れが引くまでゆっっくり休んでいくと良い。―――それに、貸しはすぐに返してもらうのが私の信条だ。」


彼はそう言って、得体の知れない笑みを浮かべた。


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bkm


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