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「落ちました!大きい穴!!穴に落ちた筈なのに、どういう訳か屋根の上に空から落下したんです。言っても誰も信じてもらえなくて・・・。」
「通常はここに繋がる筈なのだが、どこかで歪みが出来ていたのだろうか・・・。それで、余所者のお前がハートの城に何の要件だ?」
「・・・。」
「―――それも言えないのか・・・。仕方がない。」
彼はひとつ溜息をつくと、トレイを片づけ何かを探しだした。手には機械油で薄汚れた紙とペンを握っている。それを持ってテーブルに近付くと、腕を左右に擦ってテーブルの上に散らばった数々の部品を地面へ落とした。
「少し待っていろ。今、地図を書いてやる。」
そう言って、紙を広げてまずは一本線を引いた。




「!!・・・これが・・・これがこの世界の地理なのですか!!!」
パロマは大きな瞳をこれまた大きく見開いた。紙を持つ手は微かに震えている。
その位緻密に描かれた『地図』だった。
ナイトメアから貰ったのとは雲泥の差だ。あれは何だったのだろう。ボリスに笑われるのも無理はない。
「お前が今いるこの場所は『時計塔』だ。ここを中心に放物線を描くように世界が広がっている。ボリス=エレイに襲われていた森はこの辺りだ。森を抜けた先にあるのが、この世界で一番近付いてはならない魑魅魍魎が跋扈する『帽子屋』の領域だ。」
「!!」
「『帽子屋』は泣く子も黙る冷血非常極まる『ブラッド=デュプレ』が牛耳るマフィアの総本山だ。下界にある数多の同業者との小競り合いが絶えず起り、血生臭い噂ばかり耳にする。NO2の『エリオット=マーチ』、門番の『トゥイードル=ディー、ダム』も人に情けを掛けず裏切りは容赦をしない、奴らのボスに思考回路が類似した忠実な僕だ。」
(・・・・し、知らなかった・・・・・)
パロマは茫然としたままユリウスの話を聞き入った。『マフィア』だと言うのは知ってはいたが、パロマは単語としてしか捕らえられていなかった。働いていた先がそんなに危険な場所だったなんて本末転倒だ。
「お前みたいな小娘が迷い込んだが最後、血の一滴までも絞られ喰らい尽くされるだろう。まぁ、お前が向かう先は真逆に位置するハートの城だから、間違っても辿り着く事はない―――ん?どうした?」
パロマは顔面蒼白で顔中汗が噴き出していた。彼女は急いで会話の対象を変えた。
「そ、それでは『ハートのお城』はどういう場所なんですか?きっと王様とか可愛いお姫様とかいらっしゃるんでしょう?」


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