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「―――それで?クマから一緒に逃げていたボリス=エレイと口喧嘩になって、今度はあいつから銃で襲われそうになっていたのか?」
「はい・・・。何だか、売り言葉に買い言葉で・・・。」
しかし、口論になった位であそこまで激怒するものなのか?と、ユリウスは顎に手を当て推し量っている。
(・・・それは、私が『アリス』の名を出したからだ―――)
考えてみたらアリスの名前が会話に上がってから、ふざけていた彼の態度は豹変した。
彼には何かアリスに怨恨があるのかもしれない。
パロマよりも先にこの国に迷い込んでしまったアリス。パロマ以上に彼女にもいろんな出来事が起きているのは、火を見るよりも明らかだった。自分がアリスの名前を軽く口に出したが為に、彼女の立場が悪くなる等もっての外だ。これからは言動をもっと慎重にしないと、とパロマは気持ちを引き締めた。
「そもそもお前は、何故森の中をさ迷っていたんだ。」
その言葉でパロマの背中がビクンと跳ねた。慎重にと思った矢先に痛い質問だ。
「えっ・・・と、そ、それが・・・ですね〜・・・。」
「・・・嫌なら無理に答える必要はない。興味もないしな。―――それより、元気になったのなら早くここから出て行ってくれ。」
パロマが答えずらそうに目線を泳がせていると、ユリウスはそれ以上問い詰める事も無く、食べ終わったトレイを彼女の両手から取り上げる。
(追及されなかった・・・)
パロマは微かに疑問が残るものの、言い訳も思いつかなかったので、正直ホッした。そしてソファから立ち上がり深々とお礼をした。
「本当にありがとうございました。それで、助けて頂いたついでに、もうひとつだけお願いがあるのですが・・・。私、ここがどこだか全く分からなくて。出来ればハートのお城までの道順を教えて欲しいんです。」
一瞬呆けたユリウスが、まじまじとパロマを見つめた。
「―――お前は余所者だったのか!」
「?」
そう言えば猫耳の彼にも同じ様に聞かれた気がする。森中の動物の鳴き声で聞き取れなかったが、彼はあの時『余所者』と言っていたのか。しかし、パロマには一体何の事なのか思い当たらない。
「あの、『余所者』って何ですか?」
「お前はそんな事も知らないで、この世界にいたのか!どこで生き延びて―――いや、先程質問はしないと約束したな。」
パロマの素朴な疑問に、ユリウスは1人で驚きそして1人で解決している。何だか変わった人だ。
「異世界から来た人物を総括的に『余所者』と呼ぶ。今のお前の様に。どこかで大穴に落ちなかったか?」
穴なら2度程落ちたが、きっと1度目の事を指しているのだろうとパロマは瞬時に閃いた。あれがすべての始まりだった。


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bkm


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