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「チッ。ここじゃ分が悪すぎ。―――おい、俺はあんたの顔を絶対忘れないからな。今度俺の前に姿を現したら、そん時は容赦しないから覚悟しておけよ。」
彼は冷たくそう言い残して、ザッと森の中へと姿を眩ました。

「―――大丈夫か?」
残った長身の彼は淡々とパロマに尋ねる。一方パロマというと、全身の力が抜けてヘナヘナと木をつたってしゃがみ込んだ。
「こっ、こっ、こ・・・怖かったぁ〜・・・。」
全身からブワッと汗が噴き出した。今さらになって震えが来る。銃口を向けられるなんて、いつまでたっても慣れなんか来ない。
「いつもふざけたあいつがあんなに殺気立つなんて、一体何を仕出かしたんだ。―――いや、言わなくていい。私には関係の無い事だ。」
そう言って、彼女の脇をさっさと通り抜けようとする。パロマは通り過ぎる彼のコートの裾を咄嗟に握った。
「?何だ?」
「・・・足が震えちゃって・・・立てません。」
おまけにタイミング悪く、豪快にパロマのお腹の音も鳴った。情けない事この上ない。それを見た彼はあからさまにイヤな顔をしたが、彼女の所に戻って、
「しょうがない。私の住まいがすぐそこだから、そこで休んでいくと良い。」
そう言って、パロマを背負い込んだ。
「!!あ、ありがとうございま―――」
彼が踵を返すとボリスが黙認した物がパロマの目にもはっきり映った。
深緑に包まれていた場所からはいつの間にか外れ、木漏れ日が至る所に挿しこむ。足元は粗末だがしっかりとした道が真っ直ぐに伸びていた。
パロマは初めて目にする楼観に言葉を失った。
伸びた道の遥か先に位置する森の終わりに、厳粛な雰囲気に包まれて空高くそびえ立つ立派な巨塔が、そこにはあった―――



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