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「・・・ぅ!」
「うわ!泣くのかよ!女の武器をここで使うのか!!」
「泣いていません!こんな事では絶対に泣きませんっ」
強がってみても、頭は木に押し付けられた痛みがガンガンと響き、口からは恐怖で悲鳴が零れそうだ。それでも、パロマは頑として彼から目を離さなかった。
「・・・ホント可愛げねぇな。アリスの事がなけりゃ遊んでやった所だけど、こればっかりは許せないんでね。」
彼はそう言って、もう片方の手で銃を器用にクルクル回すと、ピタッと銃口をパロマに向けた。金色に光る瞳が『絶対に生かしてはおかない』と告げている。
「それじゃあ、またな?」
もうどうやっても逃げられない。パロマはあまりに怖くて、ギュッと目を瞑って身体を固くした。
しかし、銃声はいくら待っても聞こえてこない。もちろん聞こえない方が断然良いに決まっているパロマだが、不思議に思って恐る恐る瞑った目を開けてみると、銃を構えた彼の後ろにさらに大きな影が一つ、彼に向かって銃口を突き付けていた。


「―――その位にしておけ、ボリス=エレイ。」


「・・・時計屋さんが口挟んでくるなんて珍しいね。悪いけど、放っておいてくれる?」
ボリスと呼ばれた彼は銃口をパロマに向けたまま、割って入って来た男性に睨みをきかせる。パロマは降って湧いた幸運に藁にも縋る気持ちで一番後ろの彼に『助けて!』の電磁波を送る。それが届いたかどうかは定かではないが、現れた彼はボリスの言葉には従わず依然銃を構えたままだった。
「ここで時計を壊され、私の仕事が無駄に増やされるのをみすみす見逃す筈がないだろう。」
「こいつを殺っても、あんたの仕事は増えないと思うぜ?何なら試しに実験してみようか。」
(じ、実験って・・・あぁ、やっぱり殺されるのね・・・っ)
一度助かるかもと期待してしまった分、落胆が先程より格段に大きい。パロマはガクッと項垂れた。
しかし、彼はボリスの嘲笑を歯牙にもかけずに、あくまで冷静に受け答えする。
「いい加減にしろ。どこの領地まで足を踏み入れたのか、その目を見開いて確認してみろ。」
ボリスはパロマの後ろ、つまり彼の前方を垣間見て、忌々しげに舌うちをした。そして、あれだけ命を奪いたがっていた彼が、彼女に向けた銃口を下ろし、頭を押さえていた手も退かした。
いきなり自由の身になったパロマはどうして助かったのか意味が分からなかった。


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bkm


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