07
「はぁ〜、助かりましたぁ。どうもありがとうございました。」
髪も服もボロボロのパロマは、社交辞令の笑みを浮かべて深々と頭を下げた。そして向かいにはこれまたボロボロの姿の青年が1人、青い顔で彼女を睨みつけている。
「助ける気なんか欠片も無かったんだけど!あぁ、俺の大事なファーが〜・・・」
うわっクマの毛だらけだぁっとブツブツ言って、自慢のファーを細かく調べている。そんな身勝手な彼は無視するに限る。パロマは心の中だけで『さまみろ』と毒づいた。
「それでは、また。」
くるっと踵を返すパロマの首根っこを、何を考えたのか彼が逃がすものかとガシっと掴む。
「何軽〜く挨拶してんの。この落とし前どう付けさせてもらえんのかよ!ああ?!」
軽く挨拶してきたのはそっちの方だ、とイライラしながら振り向きパロマは負けずに睨み返す。
「何なんですか?!それは自業自得って言うんですよ!いちゃもん付けないで下さい。」
「うわっ!また出た八つ当たり!!尻尾ひっぱったのはあんただろ?!」
「捕まえられる所にいる方が悪いんですよ!そもそも落ちたと同時に一足先に逃げ出したじゃないですか!!女の子一人置いて先に逃げるなんて、男としてどうなんですか?!」
「な〜ん〜だ〜と!女の風上にも置けないのはそっちだろ?!その後にワザと追いついてクマを仕掛けて来たのはどこのどいつだ?!」
「私ですけど?!何か?だって銃持っているじゃないですか!いくらでも威嚇出来るでしょ!」
「そうそう、あん時あんたが切り株で豪快にコケタのは爆笑物だったな。あのまま美味しく食われちまえば良かったのに。」
「なっなな何ですって?!その切り株でクマも転んで気絶したんだから、逆にお礼を言ってもらいたい位ですよ!ホント減らず口ですね。」
そう、二人は大きな切り株の脇、巨大な身体を大の字にして倒れているクマの隣でギャンギャン言い争っていた。辺りは時間帯が変わり、すでに夕焼けになっている。
減らず口はあんただ!イヤそっちだ、とまだまだ口喧嘩が続いている中、急にクマがビクッと動いた。途端に二人ともピタッと口を噤み、息を合わせたみたいにその場から一目散に逃げ出した。



「何でこっちに来るんですか!ついて来ないで下さい!しっし!!」
「その台詞そっくりそのまま返してやるよ!!俺はこっちに用があんの!あんたこそどっかいけ!マジでウザい!!」
抜かされまいと二人仲良く早歩きで、またしても一度止まった筈の口論を再開した。
「私にだって目的があるんです!」
そう言って、パロマはゴソゴソをチェックのポケットの中をさぐる。そして目的の羊皮紙を手につかみ、引っ張り上げる際に少し躊躇した。
(これって・・・本当に地図なのよね・・・?べ、別に恥ずかしがる事、ないわよね・・・)
そう思いながらも、隣の変人には見えない様にコソコソと紙を広げた。
「何だ何だ?逆に怪し過ぎんだろ。俺にも見せろ!」
当然ならが、邪魔が入る。何だか嫌な予感しかしない地図を簡単に目の前の男性に奪われてしまった。
「ブッ!!!!あんた、何?森の中でガキの宝探しでもしてんの?これで何が分かるんだよ。俺には全く分かんねぇ!!」
地図を見た男は、パロマを指さしゲラゲラ笑って転げまわっている。


―――やっぱりこの人にもそう見えるんだ・・・




prev next

66(348)

bkm


top

「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -