05
走っても走ってもクマは巨体を揺らして追って来る。ある意味追手よりも遥かに脅威だ。パロマは生命の危機をひしひしと感じていた。
「はぁっはぁっ、ク、クマっ、クマの対処方!」
低く伸びた枝を這って通り抜け、すぐさま立ち上がりまた走りだす。彼女の頭が無い知恵を絞って『死んだふり』がやっとこさ閃いた。
チラッと後ろを振り返ると、涎をダラダラと垂らしたクマが、パロマが避けた枝に向かって腕を振ってなぎ払っていた。腕一振りで太い枝は粉々だ。
「ひぇええええ―――!!死んだふり、無理無理!!」
只管前だけを見て走っていたパロマだったが、隙間なく木々が立ち並び人の通れる隙間さえない場所に出た。前も左右も木に阻まれ、後ろには獰猛なクマ、パロマは絶体絶命の袋小路だ。
しかし、彼女はとっさの判断で一本の巨木を目標に絞り、一気に近付き思いっきりジャンプした。奇跡的に見上げるほど高い所の枝に片手が届き、幹に足を掛けて登り始めた。パロマは何度も足を滑らせたが、手を掛けた枝まで身体を持っていく事が出来た。すると足元まで追いついたクマがまた激しく唸る。
「きゃあ!!」
クマが幹を伝って身体を伸ばし爪でパロマを引っ掻こうとするが、パロマはすぐに次の枝に腕を伸ばして、更なる高さまで逃れる。届かない事で諦めたかと思いきや、今度は巨木に腕を回して揺すり始めた。
「わわっ!こ、こわっ―――お、落ちる!!!」
彼女が必死で枝を縋りつき揺れから身を守っていると、ふと真上からあるはずもない視線を感じた。揺れに耐えながら見上げると、木の葉の間から鋭い眼がふたつ、怪しく光っていた。


「こんにちは〜。何か面白いことしてんだね。」


場違いな程さわやかな挨拶をしてきた1人の人物が悠然と枝に座っていた。鮮やかなピンクのふんわりしたファー、首輪から伸びたごつい鎖、何よりファーと同色の猫の耳としっぽをもった奇人だった。
「!?」
場違いな場所にいる奇抜な人間(?)と目がバッチリ合って、パロマは思わず足を滑らせてしまった。
パロマの片足が重力に逆らえず、身体が大きく斜めに傾く。真下に迫ったクマが巨体を反らしてパロマのスカートに爪をかけた。
「きゃぁあああっ!!!」


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