03
「どこかのお屋敷でひどい扱いを受けていたのは正に君だろう・・・。まぁ逃げ出すのが君の選択だったというのならしょうがない。それで?これからどうするつもりだ。」
それを聞いて、彼女は伏せた頭をバッと上げた。
「そこなんです!!ここで貴方に会えて本当に良かった!アリスに会うために飛び出してきたものの、実は私、アリスの居場所どころか、自分の現在地まで全く分からないんです。ここに来てからお屋敷の外に一歩も出た事がなくて、右も左もわかりません。」
「そう言う事なら、フフフ。私にお任せあれだ。」
ナイトメアは偉そうにそう言って、右手には真珠の光沢を持つ華奢な造りのペン、左手には高級羊皮紙をさっと取り出した。


今、君がいるのがここだろ〜?そしてここが帽子屋屋敷〜。そう言いながらサラサラとペンを走らせる。
「・・・これが・・・これがこの世界の地理なのですか。」
ナイトメアが描いた地図は、一見幼児の落書きにしか見えない。
書きなぐりのど真ん中に矢印と『ココ』の文字が微かに読み取れた。高級羊皮紙が全くを持って台無しだ。しかし、ナイトメアがそうだと言っているのだからそうなのだろう。
「ここが君のいる場所で、そしてここが現在アリスの滞在先でもある、『ハートの城』だ。少し前までこの『遊園地』にいたが、滞在地を変えた様だ。」
彼が地図の上を指で辿った先は幼稚なお家とお花の絵が描かれている、ように見せかけて、城館と遊園地のようだ。
ほら、この写真も後ろは遊園地だ、とナイトメアが先ほどの書類を指し示す。確かに良く見るとアリスの背景には、色彩豊かな観覧車とコーヒーカップの乗り物が映っていた。
「それでは私は、この『ハートの城』という建物を目指していけば良いのですね?」
「―――言うのは簡単だが、辿りつけるかどうか・・・。後ろは帽子屋の追跡者が君の後を追ってくるだろう。こんなみそっかすの奴隷なんか普通は指で弾いて捨て置くものの、スパイ疑惑がこれで断定的となり、怒り狂ったあいつ等は君の事を容赦しないだろう。」
ナイトメアは軽くパロマを馬鹿扱いして、さらに深刻な現実を突き付ける。その言葉で彼女は心底震えあがった。
「どどどどうしましょう。」
「う〜む・・・。森の中は凶暴な肉食動物達で危険が一杯だ。だがしかし、街に出てもし手配書が撒かれていたら、すぐ見付かって君は瞬殺されるだろな。そうでなくても数多の配下を持つ帽子屋だ、どんな罠が仕掛けられているか想像を絶する。」
「・・・ホント分かっていましたけど、他人事ですよね〜、ナイトメアさん。」
またもやテーブルにうっ潰したパロマは、ナイトメアと違って本当に涙がテーブルに流れている。


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bkm


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