02
「―――私は病弱なのだから、大切に扱ってくれたまえ。身体は病弱で地位は偉大で心は純真なのだ。」
この前と同じ背の低い丸テーブル、ナイトメアはフカフカの座イスに座ってふんぞり返っている。
「そんな大層なお方が女の子で遊ばないで下さい。純真な心を持つ人のやる事とは到底思えません。」
「ひどっ!パロマひどっ!!私がどれ程心配しているか、どれだけ君の途方も無い運の悪さに、心を痛めているか分かろうともしないで!!」
座イスに凭れかかってハンカチで目を拭う。しかし、どんなに絞っても涙は出てこない様だ。
(さっき、平穏でのんびりって言ったばっかりの乾かない口で何を言う・・・っ)
パロマは眉間に青筋を立てながら、下を向いて涙を拭くという下手な演技を続けている彼を睨みつける。彼の手に持つ綺麗なレースに縁取られたハンカチが忙しなく揺れる。
―――ハンカチ・・・私の、刺繍した・・・
ふとベッドの上に置いてきた数枚のハンカチに思考が吸い寄せられた。
「そうか、君達は知り合いだったのだな〜。尋ねられれば教えてやったものを・・・。それにしても、あんなに帽子屋を怒らせるとは何を考えている。コツコツ働いて、信用を掴む予定では無かったのか?」
そう言って、下手な演技は止めたのかナイトメアはハンカチをヒラッと投げ捨てて、目の前の湯飲みにゆっくりと口を付ける。パロマはハッと我にかえって気持ちを切り替えた。前に座っているナイトメアが熱っ!と言って舌を出して手で仰いで風を送っていた。
「・・・そう思って頑張ってきましたが、状況が変わりました。起こしてしまった事は元には戻しません。私は前に進みます。お屋敷の事は・・・後で考えます。」
「何っ!あそこまでして放置?!」
ナイトメアは思わず持った湯飲みを落としそうになった。
「私の今の第一優先事項はアリスです。・・・アリスは、どこかで手酷い仕打ちを受けているかもしれない、深刻な窮地に陥っているかもしれません。こっそり泣いているかもしれないんですよ!?」
「はぁ??彼女はいたって幸せそうだが?それこそどこぞの深窓のお嬢様かと言う程可愛がられて―――」
「あぁ!!今頃、どこかのお屋敷でひどい扱いを受けているかもしれない。そう思うと居ても経ってもいられません!」
ナイトメアの台詞に被って話し出したパロマは彼の話が全く耳に入っていないのか、頭を抱えてテーブルにうっ潰して唸っている。


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bkm


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