01
森の中でも捜索隊が放たれたのか、パロマは何度も捕まりそうになりながらも、背の高い草に隠れてやりすごし、後は走って走ってとにかく全力で走り抜けた。奥に進むにつれ生い茂った草花が少なくなり地面は背の低い草と砂利ばかりになり、木立は一層高さを増して頭上高くは葉と枝で覆い尽くされている。
パロマは鬱蒼と高光も届かないような深山まで入っていた。辺りはシンと静まりかえり、どうやら追手は振り切ったようだ。
何度も辺りを確認してから倒れた朽木に背を当てやっと立ち止まった。すると一気に汗が噴き出て、まるで壊れた人形の様に力なくその場に崩れ落ちた。
「はぁ、はぁっ・・・少し、少しだけ。」
朽木に寄り添いながらも辺りを警戒するのは怠らなかった。





「おいおい、パロマ起きろ!どういう事か説明してくれ!!」
誰かがパロマの身体をガクガクと揺さぶっていた。どうやら少し休憩のつもりが気絶してしまったようだ。ハッと目を覚まし、瞬時に後ずさって辺りを忙しなく見渡した。
「 ! ナイトメアさん!!・・・と言う事は、ここは、夢の中・・・?」
「そうだ、君と私しかいないだろう。ここまでは誰も追ってこないから安心したまえ。」
まだ混乱の中にいるパロマに、ナイトメアが両手を広げて武器等持っていない事を証明する。彼女は少しだけ肩の力を抜いたが、それでも小刻みに震えた身体はどうしようも出来なかった。
「君の本体は森の奥深くで泥の様に眠っている。―――しかし、何があったというのだ〜。」
ナイトメアはそう言って、脅えたパロマの頭をゆっくりと撫でる。
「君の方は帽子屋屋敷で平穏にのんびり暮らしているから大丈夫かな〜・・・とちょこっと目を離した隙に、何故こんな事に・・・。」
(―――平穏でのんびり・・・一体誰の事?)
一瞬彼を締め上げたいと思ったが、それよりも大事な事を思い出した。パロマは右の手で握りつぶしている夢の中にまで持ってきた書類をナイトメアの目前に広げた。
「これを見て下さい!アアアアリスがっアリスがこの世界に来ているんです!!!」
震える手で広げた紙には、1人の少女が煌びやかな風景を背に微笑んでいる写真が付いていた。


「ん?あぁ、アリス?知っているとも?」


―――はい・・・・・・?


驚愕しているパロマと対照的にナイトメアはしれっと答える
「えっ?・・・・ええ?!」
「う〜む、穴に落としたのは白ウサギだが、先に通路を開けたのは私だからなぁ〜。結果的に私が彼女をこの国に連れて来た、的な?感じ??―――あ、この写真はアリスが綺麗に映っているな〜。背景から推測すると、ここに来たばかりの―――ぐげぇっ!!」
パロマが堪え切れなくなってナイトメアの首を掴んでブンブンと振りまくる。
「知ってたんですか?!貴方知ってたんですか?!何で?何で教えてくれなかったんですか―!!」
「お・落ち着け・・・うっぷ・・・振るなっ気持ち悪・・・うぉえええ〜。」
大量に吐血したナイトメアとキャーと逃げ惑うパロマで、静かな夢の中は二人だけなのに大騒動だった。


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