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「とても嬉しかったんです。お陰で早く治れた気がします。」
「?まぁ、早く治ったんだったら、良かったじゃねぇか。―――あぁ、そうだ!お前、双子のクマのヌイグルミは、本人達にバレたら事だぞ。気付かれる前に始末しておけよ。」
「!!ななななんでそれを?!」
パロマは手に持っていた箒を動揺で落としてしまった。
「俺は 何でも 知っている。」
まるで推理探偵の様な台詞を、逆に犯人の様なあくどい顔をしたエリオットが口にする。
あれはあんまりにも腹が立った時のストレス解消グッズだ。作った時に思わず懲りすぎて見た目にも分かる位憎らしい双子にそっくりに仕立ててしまった。
(でも、あれは部屋に置いてあったはず・・・?)
部屋の内情に詳しいだなんて、やはり『足長おじさん』はエリオットだと1人深く頷いていると、遠くの方からパロマを呼ぶ声が聞こえた。
「パロマ〜!次の休憩時間帯にオペラの続きを歌ってくれる約束でしょ〜?もうみんな庭で待っているわよ〜?」
数人の使用人が階段を上って長廊下に顔を出す。どうやら仕事中のパロマを呼びにきたようだ。
「え?もうそんな時間帯ですか?!今すぐ向かいまぁす!エリオットさん、それではこれで失礼しますね。」
パロマは箒を慌てて拾って、足を気遣いつつ迎えに来た使用人の方にパタパタと走っていく。何を思ったのか一度止まってエリオットに振り返った。
「ヌイグルミの事は、他の人には内緒ですよー!」
そう言ってニコリと笑って手を振り、階段下に消えていった。
「あいつ、随分慣れてきたよなぁ〜・・・」
エリオットは斧でトントン肩を叩きつつ、踵を返して自分の仕事に戻っていった。



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