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「おい!サボらずしっかり仕事しろ!!」


―――治った早々、これですか・・・。


パロマは廊下を箒で掃きつつ、げんなりと後ろを振り返った。
後ろには斧を担いだエリオットが憤然と立っていた。
怪我は治ったものの、痛めた足は癖にならないように慎重に行動していたパロマだが、そんな事はここの住人達は分かってはくれない。次々と仕事を命じられ、気付けばいつもと同じ過酷な労働が課せられた。
「エリオットさん、手持ちの武器を変えたんですか。双子の真似なんて冷やかされるだけですよ?」
「ンな訳あるか!これは仕事をさぼりっぱなしのアイツ等に対する、完膚無きまでの体裁だ。」
要するに、没収したという事か。学校でよく卑猥な雑誌を持ってきた男子生徒が、先生に取り上げられていたのを懐かしく思い出す。
「そんな事より、エリオットさん。熱で倒れていた時はいろいろとありがとうございました。」
パロマはそう言って、姿勢を正してペコリと彼に向って頭を下げた。
高熱でベッドの住人だった時、食べ物を差し入れしてくれていた謎の人物を『足長おじさん』と命名し、ひっそりとそれが誰なのか推理していたパロマだった。ブラッドである筈がない。双子は高熱が出たその日に、傷薬と食べ物がごちゃまぜに入った籠を持ってお見舞いに来てくれた。やはり熱が出たのに動揺したらしい。偉そうに御託を並べながらやってきたが、心なしか心配そうにしていた。そうなると寝ている間に食べ物を置いていくという行動は、二人にしては不自然だ。消去法により『足長おじさん』はエリオットと判明した。以前お茶会の時にケーキを分けてくれたのも理由として大きい。頂いた善意は感謝で返すのがパロマの常々の信条だ。


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bkm


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