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「もぅ。どこまで飛んだのよぉ〜。」
キョロキョロと見渡しながら、見つけた書類を一枚ずつ拾う。二階から風にさらわれたのだ。どこまで飛んだか予想もつかない。しゃがんでは拾いしゃがんでは拾い、ポールに引っ掛かっている数枚は破かない様に慎重に回収した。一枚が手を伸ばすより速く、風にさらわれてしまう。白い紙の行方をハラハラしならが目で追っていると、庭より遠く、木々が鬱蒼と茂った場所にも白い紙が落ちているのが微かに見えた。
「あんな所まで・・・。」
次の風が吹く前にと急いで捕まえにいくと、さらに先にも落ちているのを見つける。
そうして、パロマは気付かぬうちに帽子屋敷の庭から続く、深い森の奥へと入っていった。


懸命に下ばかり探っていたパロマだが、ふと回りを見渡すとそこは見慣れた風景から一変して、緑したたる木立に囲まれた森の中だった。ここまでくると風もそんなに入ってこないので、紙らしき物は落ちていない。パロマはそろそろ屋敷の近くまで戻ろうと踵を返すと、木漏れ日が美しかった辺り一面が急に影が濃くなり夕暮れに包まれた。どうやら時間帯が昼から夕方に変わったようだ。上を見上げると雲が薄らオレンジ色に染まっている。
「あぁ!」
見上げた先でまたもや白い紙が一枚、木の枝に引っかかって風に揺れているのを発見した。背伸びをして出来る限り手を伸ばしてみるが、後少しという所で手が届かない。
「あと少しっ・・・うぅわっ!!」
二三歩移動しつつ両手を伸ばしていると、一歩動いた足元の木の葉の下に・・・地面がなかった。
「えっ?きゃああ!!」
パロマは何の抵抗もできず、そのまま辺りの木の葉と一緒に大きな穴に落っこちた。とっさに両手を伸ばしたが穴の側面に飛び出た岩を指が掠っただけで、そのまま底までドサっと落ちる。落ち方がおかしかったのか、右足に激痛が走った。
「うぅっ―――いったぁ・・・」
上を見上げると、紙が引っ掛かっていた大木が見えた。上から砂埃が降ってきてパロマに掛る。ゴホッと咳込みながら辺りを見回すと、どうやら何かの穴に落ちたらしい。固い岩がゴツゴツと飛び出た大穴で、そこにぶつかりながら落ちたので、仕事着は所々が破けてひどく泥に汚れ、身体は全身打撲と右足に激痛、両手足は擦り傷だらけという、ボロボロの状態だった。
(―――私、何度穴に落ちたら気が済むのかしら・・・。)
パロマは激しい自己嫌悪で立ち上がれなかった。自分の鈍くささが腹立だしい。
暫しその体制で反省していたが、気を取り直して立ち上がろうと両足に力を入れる。しかし、立ち上がる所か、起き上がる事も出来なかった。右足が異常に腫れあがり熱を持っている。あまりの痛さに顔を顰める。そんなに深い穴ではないのに、このままだと這い上がるのは無理そうだ。
「痛ぃ・・・。困ったなぁ〜・・・。」
パロマは上を見上げては途方に暮れて、手放さなかったブラッドの書類を胸に抱え込み、そして深く溜息を付いた。


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bkm


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