21
それから何事もなく、9時間帯が経過・・・



帽子屋敷の中、ブラッドの仕事部屋では
「フフフ・・・」
「!?何だよブラッド!いきなり笑うなよ、気持ちわりぃなぁ〜・・・・」
無言で仕事をしていた筈なのに、急に悪魔の様な底冷えのする笑い声をブラッドが発したので、側にいたエリオットはビクッとした。
「これが笑わずにいられるか。とうとう鳥の尻尾を掴んだぞ。」
「鳥の尻尾?そんなん掴んでどうすんだよ。」
焼き鳥か?とエリオットが嬉しそうに尋ねる。そんな彼をブラッドが半眼視する。
「―――お前は何でもそのままで取るな、脳無しめ。うちの奴隷につけていた部下の報告によると、あいつが10時間帯弱行方不明だ。」
「は?パロマが??腹が痛くてトイレにでも篭もってんじゃね?」
「普通ならそう思う、いや10時間帯は籠らないだろう。―――間違いなくあいつは、お前がもぎ取ったジャック・クロフォードの機密文書及び潜伏者のリストと共に、突如姿を消した。」
「・・・マジか?!」
椅子に座ったブラッドの後ろで、開いた窓から風が入り込みカーテンを揺らす。
彼女は一度背後に回って机の書類を黙認したのだろう、部屋に風が通り抜けた時、あれは確実に机の上の書類を狙って窓を開けた。そして、命じられるまま部屋から飛び出して行った。
(―――うまい状況を作り上げたものだ。)
「ここまで粘って潜伏していたんだ。私もまさかこんな手で来るとは思わなかった。」
「じゃあ奪う物奪ってトンズらかましたって?あいつはやっぱり真っ黒だったって訳か。」
エリオットの目が鋭利に光り出す。手近にあった豪華な飾りが施された花瓶を揉むろに掴むと、力まかせに床に投げつける。派手な音が鳴り響いて、花瓶は粉々に砕け散った。
「―――さて、それでは奴隷の部屋を訪ねて、追跡調査と物的証拠探しといこうじゃないか。」
部屋から出て行く二人の後ろ姿に、薄暗い闇が見えるようだった。




prev next

43(348)

bkm


top

人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -